日進月歩番外編

□梟の見舞い
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「ヘイヘーイ!見舞いに来たぜ怜!」

『光太郎、ここ病院』







入院生活にも慣れてきた頃、光太郎が俺の見舞いにやって来た。
インハイ予選を終えたばかりだというのに、こいつは元気だ。








「これ、見舞いの品な。さっきスーパーで買ってきたリンゴ!今食ってもいいぞ!」

『かじれってか』






光太郎が差し出してきたのは、真っ赤なリンゴ一個。今食ってもいいぞって……。いや、嬉しいんだけどな?
食べる方法に「かじる」の選択肢以外ないんだけど。
……あとで母さんに剥いてもらおう。








「聞いてくれよ怜〜」『断る』「いや、聞いて!?」





「そういうのよくないと思う!」と喚く光太郎にため息を吐く。
一応、ここ病院なんだけどなー。
もう少し静かにできないだろうか?
いや、でもしょぼくれた光太郎は面倒くさいし……。

こうやって最後に折れるのは、いつも俺なのだ。








『ハイハイ……。で、どうしたんだ』

「俺のところにさー。セッターで1年の赤葦っていうヤツがいるんだよ。でもそいつ、スゲーノリ悪いの!」

『へー』

「いつもすっげえ冷静なの!1年とは思えないくらい!」






それは、気になるな。この光太郎を冷静に扱える1年か。横で光太郎はブーブー言っているが、その顔はどこか楽しそうだ。







『そうは言っているが、表情は隠しきれてないぞ。その赤葦って奴を、認めている証拠だな』

「……まあな!赤葦は何だかんだ言って、オレのスパイク練に最後まで付き合ってくれんだ」

『そりゃすごいわ』






あの光太郎の自主練に、最後まで付き合えるとは……。
光太郎はいいパートナーを見つけたんだな。







『会ってみたいな、その赤葦って奴に』

「じゃあ、今度連れてくるな!」

『まじかよ』





後輩の予定を勝手に決めるなよ……。
俺、わかったわ。赤葦ってやつは絶対に苦労人だ。







「赤葦連れてくるから、怜は早く足を治せよ」

『!』

「そんで、またみんなでバレーするんだ!怜には、俺のブロックの相手になってもらうからな!」






ニッと笑う光太郎に、俺もつられて笑う。



そうだ、こいつだって俺を待っててくれている内の一人なんだ。鉄朗たちや陸、光太郎をはじめとする梟谷のメンバー。


俺は、多くの人に支えてもらっている。









『待ってろ。来年の夏には、お前のスパイクをバシバシ止めてやるからな』

「おっ、言ったなー!俺だって怜のブロックを打ち抜いてやるもんね!」









俺を信じてくれている奴らのためにも、絶対に夏までに戻ってやる……!








































梟の見舞い
(よっしゃあああ!燃えてキター!)
(ちょっ、ボリューム……!)
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