日進月歩番外編
□蒼の本気
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始まりは一本の電話からだった。
「怜ーー!助けて!!」
『俺は知らん。自力で頑張れ』
「冷たい!」
季節は夏。
2日間の合宿を控えたある日、光太郎から自身の危機を知らせる電話がかかってきた。
嫌な予感がしたが、内容を聞いてみると「テストがやばい!」とのこと。
あいつ、何も学んでねえな。
「どうしたユキ」
『鉄朗。実は光太郎が……』
鉄朗にも事情を説明すると、眉間にシワを寄せ一言「あいつバカだろ」と呟いた。
全くもってその通りです。
ため息しか出ないが、あいつも3年生。
このまま見捨てるわけにもいかないだろう。
『ちょっと俺テスト前、光太郎とこ行ってくるわ。一週間前は部活休みだろ?それ使って行ってくる』
そう光太郎にも伝えようとすると、鉄朗に携帯を取り上げられた。
『ちょっ、鉄朗!?』
「あー木兎?ユキだけじゃなくて俺もそっち行くから」
「えっ、黒尾!?なんでお前が」
「うるせえ。じゃあな」
通話終了。と鉄朗が携帯を俺に返す。
『お前なあ……』
「何だ駄目なのかよ」
『別に構いやしないけど。……で本心は?』
「勉強見てくださいユキ君」
『やっぱり』
何となくそんな感じはしたけど。
こうして、音駒と梟谷の合同勉強会の開催が決定したのだ。
*****
『……ほら、光太郎ここ間違ってる』
「あ''!また間違えた!」
梟谷学園の近くにあるファミレス。
そこで俺たちは勉強会を開いていた。
集まったメンバーは梟谷から木兎、赤葦。
音駒からは俺、鉄朗、衛輔だ。
海は音駒で1・2年生をみてくれている。
『おい、赤葦。木兎以外の3年生がいないみたいだが』
「他の皆さんは木兎さんの頭のレベルを知っているので、不参加です。皆さんから雪村さんへ"このバカを頼んだ"との伝言を預かっています」
『嘘だろ……』
こいつのヤバさは俺も入院中実感したが、仲間に見限られるとは相当だぞ。
俺一人で何とかなるのか……?
『で、赤葦は?まさかお前が赤点の危機だなんて言わないよな』
「違います。木兎さんの監視役として派遣されました」
『お前も苦労してるな』
「まあ。でも今回は雪村さんもいるので」
『あ、巻き込まれた』
でも仕方ないか。
偶には赤葦の負担を減らしてやらないとな。
幸いにも、木兎以外赤点の不安はないからまだマシだ。
「ユキ、ここなんだけど……」
『ああ、そこはこの公式使うといいよ』
「おいユキ。これは?」
『それはこの文法』
「すみません雪村さん。この問題なんですけど」
『それ難しいよな。この一文に注目してみろ。赤葦なら解けるはずだ』
「なあなあ怜!」
『お前はちょっと黙れ』
「俺の扱い酷くない!?」
ギャーギャー言う光太郎に俺は頭を抱える。
待て待て待て。何で皆俺に聞くんだ。
俺は一人しかいないんだぞ。
『おい衛輔、鉄朗。俺だけじゃなくてお前ら互いに教え合えよ。お前らを相手にできるほど俺は器用じゃねえ』
「「こいつに聞くのは何か癪」」
『ハモるな』
「すみません雪村さん。俺まで教えてもらって」
『お前は仕方ねえよ赤葦。こいつらには聞きにくいだろうし』
「見ろ怜!これすげえうまく描けたと思わねえか!?」
『一発殴っていいか』
はあ……。と大きなため息を吐く。
こうなりゃヤケだ。
何が何でもやってやる。
こいつら全員の成績上げてやる。
『お前ら覚悟しろよ。俺が本気になったからには、徹底的にやるぞ』
「やべえ。ユキの顔がマジだ」
そして期末テストでは、全員過去最高の点数を叩きだしチームメイトや先生たちに驚かれる。
しかし皆口を揃えてこう言った。
「蒼を本気にさせると怖い」と。
蒼の本気
(おーい雪村!今回のテスト何位だった?)
(7位)
(一体お前に何があった)