日進月歩番外編

□大切な人たち
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〈それでは只今より、音駒高校体育祭を開会します!〉











*****







本日は音駒高校の体育祭。
天気は快晴。絶好の体育祭日和だ。



「おーい雪村ー」

『おー、お疲れ陸』


視線の先には、汗だくの陸の姿。
それもそうだ。こいつは今競技を終えて帰ってきたばかりなのだから。



「さすがに疲れたわ。陸上部速すぎだろ」

『それでも5000mの長距離走で2位は大したもんだろ』

「陸上部はやっぱ格が違うわ」



はー、と言いながら俺の横に座る陸。
お疲れの意味を込めてスポドリを渡すと、陸は一気にそれを飲んだ。
それだけ疲れたんだろうな。



「次何だっけ?」

『次は200m走だな。で、その次が借り物競争』

「あー、じゃあもうすぐ雪村もでるのか」



俺が出る競技。それは借り物競争。
長距離走や足に負担がかかるような競技は除外してもらった。
100m走ぐらいなら出るって言ったんだが、クラスのみんなが譲ってくれなかった。解せぬ。
陸曰く「みんなお前のことが大切なんだよ」と言ってくれたが、なんだか俺だけ申し訳ない。




〈借り物競争に参加する選手は入場門に集まってください〉



『あ、呼び出しだ』

「いってらー」

『おう、行ってくる』








*****









競技は次々と進んでいき、ついに俺の番まできた。
今まで走っていった奴らの中にはとんでもない内容の借り物があったみたいだが、俺は大丈夫だろうか……。
だが心配していても始まらない。
スタートを知らせるピストルが鳴り、俺は借り物が書いてある紙を目指して走る。




『さて、何が書いてあるか……』



ピラ、と紙をめくる。
紙に書いてある文字を見て俺はすぐさま動きだす。
俺が向かうのは3年生の席。




『おい、鉄朗!信行!衛輔!』

「え、ユキどうした……」

『いいから3人とも来い!』



有無を言わさず3人を連れ出す。
次は2年生だ。



『研磨!虎!招平!お前らもだ!』

「え、ヤダ……」

『すまん研磨我慢してくれ!』



2年生も連れ出し、最後は1年生。



『走!優生!リエーフ!』

「「「ハイ!ユキさん!」」」

『お前らはノリがいいな!!』



まあ、これで借り物のお題は揃った。
大勢の人を連れ俺はゴールを目指す。
ゴールテープを切るとアナウンスが流れる。


〈1位は雪村選手!さて、お題は何だったのでしょう!〉


俺の元に放送部員らしき人物がマイクを持ってやってくる。
俺はそいつにお題の紙を見せる。
俺のお題、それは"大切な人"



『俺にとって大切な人は部活の仲間たちだ。今の俺があるのはこいつらのおかげ。別にお題の人物は一人じゃなくてもいいだろ?』


そう言った俺に周りはシン、となる。
え、俺なんか変なこと言った……?



〈……ゆ、雪村選手お題もクリアー!!文句なしの1位です!!〉



そしてドドドと会場は盛り上がる。
な、なんか涙流してるやつもいるんだけど……。
連れてきた仲間たちにお礼を言おうと振り返る。


『あ、お前らもありがとな。お題とは言え無理矢理連れてきて……』


振り返った先にあった光景は、涙を流してる1年生に虎。少し照れくさそうにしている研磨と招平。ニコニコしている信行。そして地面に倒れ込んでいる鉄朗と衛輔。
え、何この光景。


「ユギざん!俺、俺、嬉しいっス!」

「ユキらしい答えだね」

「ユキがマジでいい奴すぎる……」

「俺も同感です夜久クン」



よ、よくわからんがとりあえず1位取れたので良かったのか……?
















大切な人たち
(ただいまーって何で陸も泣いてるんだ)
(ばかやろー、あんなセリフ聞いて泣かずにいられるか!)
(クラスのみんなもほぼ全滅か……)
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