日進月歩番外編
□復活の蒼
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その戦いに、誰しもが見入った。
梟谷のエースへとトスが上がった瞬間、そのエースと音駒の蒼い髪をたなびかせたミドルブロッカーの雰囲気がガラリと変わった。
見ていた者はゴクリと唾を飲み、また見ていなかった者はそのピリリとした雰囲気に思わず振り返る。
そして全員がこう思った。
ーー勝者はどちらだ。
*****
「凄かったな」
「ああ、どちらが勝つか最後までわからない試合だった」
菅原と澤村は、先程の音駒と梟谷の試合感想を言い合っていた。
周りを見れば、1・2年生も同じようなことを話していた。
それだけあの勝負は凄かったのだ。
「……一年振り、か」
「うわー、完全に復活してやがる」
「復活?」
澤村たちの側にいた強羅と小鹿野の言葉に二人は首を傾げる。
「そうか、お前たちは知らないのか」
「あの蒼い髪のやつな、雪村って言うんだがあいつ全国でも有数なブロッカーだぞ」
「全国!?」
いつの間にか近くにいた日向が驚きの声を上げる。日向だけではなく、"全国"という単語に澤村たちも驚く。
「蒼い髪を揺らし、スパイカーの前に立ちはだかる高く、大きな壁。通称"蒼壁"」
「雪村の渾名だよ」
「蒼壁……。そうか彼が」
強羅と小鹿野の言葉を聞いて、菅原はぽつりと呟いた。
「何だスガ、知ってるのか?」
「……GWの試合の時に、リベロの夜久君から言われたんだ。"次に試合するときは蒼い壁に気をつけてね"って」
菅原の脳裏に蘇るのは、音駒には一人足りないと悲しそうに言っていた夜久の姿。
きっと彼が、夜久の言っていた親友の人なんだろう。
そう菅原は思った。
視線の先には、笑顔で雪村とハイタッチを交わす夜久がいた。
あの時とは違う、心からの笑顔。
「GWの時の音駒とは違うってわけか……」
「さらに強くなってるだろうね」
「我らがエース様にとっては大きな壁だな」
手強くなっているはずなのに、二人は笑顔だった。彼との勝負は自分たちをもっと強くさせる。そう確信めいたものが二人にはあったのだ。
「さて、旭にも活を入れてくるか」
「ほどほどにな大地」
音駒との試合が楽しみだ。
復活の蒼
(鉄壁と蒼壁ってどっちが怖いかな)
(……どっちもどっちじゃね?)