日進月歩番外編

□託される役目
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『わざわざ済まないな、赤葦。
会ったことのない奴の見舞いなんて、いい気しなかっただろ』

「イエ、そんなことは……」






まあ、驚きはしましたけど。


木兎さんに雪村さんのことは、さんざん聞かされていたので、そこら辺の抵抗はあまりなかった。



雪村さんは、申し訳なさそうな顔をする。









『実は、俺が光太郎に頼んだんだよ。赤葦を連れてきてほしいってな』

「えっ?」






これには目が点になった。




雪村さんがどうして俺を?









『光太郎のこととか、いろいろ話したいことがあってな。
梟谷の方で光太郎はどうだ?相変わらず元気でやっているか?』

「えっ、ハイ。いつも通りハイテンションですけど……」

『そうか』







雪村さんは俺の言葉に安心した様子。


木兎さんはいつも通りだ。そんなに心配することがあったのだろうか?












『赤葦、光太郎のこと頼むな』









いきなり、真剣な表情で雪村さんは言った。



その顔から、冗談ではなく本気で言っていることがわかった。










『あいつは単純だからな。少しのことでテンションが上がったり、下がったりするだろ?』

「そうですね」







俺の早い返事に、雪村さんは苦笑する。






まだ数ヶ月の付き合いだけど、木兎さんの性格が面倒くさいっていうことはよくわかっていた。









『まあ、そんな奴だけど……他の誰よりもWエースWに相応しいって思うだろ?』

「!」








ニヤッといたずらっ子のように、雪村さんは笑った。



雪村さんの言葉に、俺は納得する。


確かに面倒くさい人だけど、誰よりも
WエースにW相応しい人だ。
それは、他の先輩たちも認めてる。









「はい。他の皆さんもそう思っています」







俺の言葉に、雪村さんはにっこりと笑う。


そんな顔もできるんですね……。










『WエースWである光太郎には、これからプレッシャーとかいろいろ背負わなきゃいけないものが増える』






だから……。と雪村さんは続ける。











『だから、一番光太郎に近い存在であるお前が支えてやってくれ。
そして……W全員で光太郎を支えるWそんなチームになってほしい』

「!」


















W全員Wで木兎さんを支えるチーム。








その言葉に衝撃を受けた。


そうか、そういうチームもアリなのか。











「もちろんです。できる限り木兎さんのサポートはします。
そして、なってみせます。
全員で木兎さんを支えるチームに」

『!そうか……。頼んだぜ赤葦』

「はい」








雪村さんは一瞬、驚いた顔をしてすぐに笑顔になった。


少し話しをしたぐらいだけど、この人が木兎さんを凄く想っていることが伝わった。

木兎さんにとってこの人はライバルで、この人にとっても木兎さんはライバルなんだともわかった。


こういう風に、互いに認め合ってる人がいるのは少しだけいいなと思った。








『悪いな赤葦。これから光太郎にいろいろ苦労かけられると思う』











本当に申し訳なさそうに言う雪村さんに、ああ。この人も苦労しているんだと思った。

























託される役目
(いつかこの人と)
(チームを組んでみたい)
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