with幻影旅団 イルミside
□現実の狭間
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ふぅ、と一息ついてベッドになだれ込む。
時刻は23:55
お風呂に入る気力もないまま
真っ白な天井を見つめる。
このまま眠ってしまいたい、なんて思いながら。
「お嬢様、ご入浴の準備が整いました。」
けれど執事のその一言で目が覚めた。
やはり私にはつかの間の休息もないのか。
『今行く。』
ドアを開けて浴場に向かう途中、また出そうになった溜息をのみこんだ。
○○○○
熱いシャワーを浴びながら窓の外の月を眺める。
月でさえ1日1日欠けてゆき、1日1日戻り、形を変えているのに。
どうして私はこんなに何もないままなんだろう。
シャワーのお湯ではないものが頬を伝った。
クラッ
『ッ、またッ。』
目の前にノイズがかかるように視界がシャットダウンされていく。
身体の力が抜け、指先が痺れる。
『だ、れかッ。』
パタリと冷たいタイルに倒れこむと、お嬢様!という慌てたメイド達の声が聞こえるだけだった。
このまま消えてしまいたい。
そんなことを思いながら。
○○○○
「随分遅いお目覚めね。」
高く透き通った声が真っ白い世界に反響する。
『ここ…どこ。』
辺りには何もない。
目の前に白いワンピースを身にまとった幼げな少女がにこりと笑っているだけ。
「あなたは今日死んだの、だから此処は天国。ってことになるのかしらね?」
『…そう。』
これは夢じゃないのか、と思ったけれど何もかもがリアルに感じ取れて現実だと理解した。
「死んだっていうのに随分冷めてるわね。」
くすくすと笑う少女。
『安心してるのよ。楽になれて。』
苦笑いをすると少女は、ふぅんとだけ返事をした。
「でもあなた、天国にいけるわけじゃないわ。こんなに早く貴方を殺したのも理由があるのよ。」
私はピクリと眉をひそめた。
「世界というものは必ずしも一つじゃないの。貴方が生きていた世界意外にも何億という世界が存在するの。」
『…』
「その世界の一つで少し次元が歪んじゃってね、だから貴方に次元を修復しにいって欲しいのよ。」
『…どうやるの。』
「理解が早くて助かるわ。」
私だって何にもなしに天国へ行けるなんて思ってないもの。
そう密かに思う。
「ある人物を救って欲しいの。2人いるんだけど、その2人、次元の波長が合わなければ死ぬことになる。だから2人の死を防いでほしい。」
『その2人が死ぬとどうなるの?』
「他の世界戦と反応を起こして今ある世界さえなくなってしまう危険がある。」
『なんでそんな大切なことを私に?』
そう聞くとニヤリと少女は怪しげに笑った。