with幻影旅団 イルミside

□不思議な出会い
1ページ/2ページ

ガチャガチャッ

薄っすらと瞼を開けると自分の足が見えた。そこには鎖がグルグルと巻かれていて鉄独特の冷たさを感じた。

「おはよう。」

そして頭上から聞こえる抑揚のない声に今度こそ瞼が大きく開く。

上を見上げると長い髪の男が光のない瞳でこちらを見下げていた。

その後コンマ数秒もないうちに自分の置かれている状況を理解した。
椅子に縛られ、手足も鎖でグルグルと巻き付けられている。

『貴方、誰?』

グサッ

『あぁっ!!!』

自分の目が追う前に太ももに針が刺さる。

「俺の家に侵入しといてそれはないと思うよ。」

そしてまた頭上から抑揚のない声が降りかかる。
けれど太ももの痛みに話など頭に入ってこない。

『ふぅっ、ふっゔぅッ…』

額から汗がダラダラと流れていく。

「痛みにもなれてないみたいだね。なのに俺の針を避けるなんて。君、何者?どこの遣い?」

『シ、知らッな、あぃッ!!?』

言葉を最後まで発する前に逆の太ももに針を突き刺される。

「俺、暇じゃないんだ。早くしてくれない?」

ちらりと前髪の間から主を盗み見るとコテンと首を傾げていた。

日常に飽きていたのは事実だけどこんな苦痛臨んじゃいない。
前よりひどくなってるじゃない。

『私、だっ、て…ッ好きで、こんなとッこ、に、いないッ…』

キッと能面野郎を睨むと場に重く強いオーラが流れた。
それは太ももの傷口を広げるようにじわじわと私を責めた。

「なに?空から急に降ってきた。なんていうの?」

私は精一杯の力を振り絞って大きく首を縦にふった。

「…。」

わたし、嘘ついてない!!
そう大声で叫びたくなった。

何せ本当にそれが真実なのだから。

「…それまでは何してたの。」

信じたのかまだ疑っているのかはわからないが次の質問に入り胸を撫で下ろす。

『………。』

天国にいました。

なんて言えるわけがない!!!
そもそもあそこは天国なのかも定かじゃないし…。
また針をさされるだけだ。
今度は心臓かもしれないっ…。

でも、嘘なんて通じるわけがない…。

『…1度、し、死んだの…ッ。』

冷や汗がじっとりと背中を伝う。

『信じて、もらえないっ、て、いうのは、わかってッます!』

痛みに耐えながらも顔を上げ暗闇のような瞳を見つめる。

「そ。」

男は顔色を変えず何にでも捉えられる返答をした。

「まあ、何であっても君を生かすつもりはないけどね。」

安心したのもつかの間に針を出す男。

自分の瞳孔が開くのがわかる。
どくどくと心臓の音が頭の奥底にまで反響する。

2度目の死。それは一瞬だろう。そう心の片隅で虚しく感じた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ