with幻影旅団 イルミside
□不透明な空気
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熱いシャワーが傷口を痛める。けれどその汚いものを、整理しきれていないもやもやを、流してくれた。
ヒソカが出て行った沈黙の中イルミが入って来なよ、と浴室を指差して言ってくれたのだ。
一体彼は何を考えているのか全くわからない。
殺そうとして、放置して、なのに包帯を巻き綺麗で上質そうなベッドで寝かせてくれた。
もしかすると私のこの念を買って出てくれるのかもしれない。
そう思うと気分が高揚するのがわかった。
けれど今のこの身体ではどうもまともに動くことも無理そうだ。
念の消費も激しかったためか、今は微量しかでない。
『はあ。どうしよう。』
キュッと蛇口を捻りバスルームからでる。すると洗面台にはもともと私が着ていたのとそっくりのシャツとベスト、短パンが置いてあった。
姉妹でもいるのかな?そう思いながらセットでおいてあった下着を身につけた。
けれどどうやらイルミが用意したのではなく執事が置いたらしい。
側には何かあればこちらまで、と番号が書かれていた。
『ん?』
しかしそこで一つ疑問が浮かぶ。こんな文字、知らない。
なのに自然と、まるで日本語のように読めてしまった。
これも念と同じく異世界に飛ばされた特典なのかはわからないが、文字で不自由はしなさそうだ。
脱衣所から出るとイルミの姿はなかった。
もしかすると今が逃げるチャンスでは、と思ったが、何故助けてくれたのか気になる。それにまだこの世界のことを何も知らない。
こっちの世界ではイルミみたいな人間ばかりなのだろうか。
そもそもイルミが何者かもよくわかっていない。
何もかもが経験のないものなのだ。
そんなことを考えていると後ろから針が飛んでくる。
鈍い音を響かせながら壁に刺さった針はすぐにイルミのものだとわかった。
「基礎体力は充分、だけど念の扱いももっと知っておかないとね。」
すぐ後ろには嫌なオーラを放つイルミがいた。
『私を、雇ってくれるのっ!?』
けれどそんなことはお構いないしに駆け寄っていく。
今は何より目的達成のためどこかで生き延びねばならないのだ。
「雇う?君を?なんで?」
私は思わず声を漏らした。
『え、じゃ、じゃあ、なんで私を生かしたんですか?』
もっともな質問だと思う。