with幻影旅団 イルミside
□舞台の上の駒
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何故こうなったのか。
私はまたイルミに窓一つない監禁部屋へ閉じ込められようとしていた。
『ねえ、イルミ!意味がわからないんですけど!!』
何事もなかったかのように部屋を出て行くイルミの腕をがしりと掴む。
「なにが?」
不思議そうな目で見られる。
不思議なのはこっちだ。
『だから、なんでまた閉じ込められなきゃならないんですか!?』
そう抗議すると唸りながら考え込んだ後彼は口を開けた。
「だって、君の念を使うから、閉じ込めておかないと。」
平然と恐ろしい言葉を言う彼に絶句する。
『私逃げませんから!!』
信じられないとでも言いたげな目だ。
『せめてもう少し自由に。』
俯き遠慮がちに言うと彼は分かったと承諾の言葉を口した。
『あ、ありがとうございます。』
思わぬ一言に思わず顔がほころぶ。
「ただし鎖で俺の部屋につないで置くから。」
疑いぶかい人だ、と思いながらも此処から出られるのならいいかと私もそれを承諾する。
けれど頭の片隅には離れない目的がある。
ある2人を救うこと。
その1人がもしかするとイルミかもしれない。では、もう1人は?
もしかするともっと遠くの別の誰かである可能性もあるのだ。
何はともあれもっとヒントが必要なのだ。
前を歩くイルミの背中を見ながら私は顔をしかめていた。
○○○○
ベッドの柱と鎖で脚を結ばれる。
半径は10mといったところでかなりの距離が自由に歩ける。
彼の部屋がぐるりと歩ける程度の距離だ。
外を見ると真っ暗闇に月が欠けていた。
2日前までは別の世界で月を見ていたのだから変な気分だ。
また別の厚い本を読む彼の横顔をちらりと盗み見る。
「なに?」
『え?あ、いや、この世界はイルミみたいな人ばかりなのかなあ、と…。』
咄嗟にごまかしの言葉が出る。
しかし知りたかったのは事実だ。
「俺みたいなって?」
鬼畜拷問大魔人
なんて言えたら苦労はしないが
ここはオブラートに包んでおこう。
『針を投げたり…。』
伏せ目がちに彼を見ると本から顔をあげていた。
「一般人はごく平凡だよ、生きるためのサイクルを毎日飽きずにしてるだけさ。」
また本に目を落とす彼は興味もなさそうだった。
『そうですか。』
暫しの沈黙。
少し気まずくなり外を眺める。
「君がいた世界は俺みたいなのばっかりだった?」
ふと思わぬ言葉をかけられ振り向く。
『あ、いえ。むしろこんな念なんかが出せる人なんていませんよ。それこそアニメみたいな。』
そう、今私がいる世界は元いた世界の人たちからすればアニメなのだ。存在しえないものなのだ。
なんとも不思議なことだ。