*

□淡く光らない
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「な、なんで月島が青城にいるんだ!?」


バスん中でゲロを吐いてスッキリしたってのになんかまたゲロ吐きそう

月島がなんで青城のジャージ着てんだよ

しかも髪めちゃくちゃ伸びてるし!

てかあれ?

月島ってうちの生徒だよな

じゃああれは一体………?


  * * *


「日向うるさい」

「う、うわぁ!こっちにも月島!?」


だからうるさいって

向こうの人達がこっち見てるし


「ほたるちゃん、久しぶり」

『山口、久しぶり』

「ちゃんとマネージャーしてるじゃん」

『まぁね。蛍もそれらしく見えるよ』

「そう?」
『見えるだけだけど』

「…………チッ」

「ちょ、ちょっと待て!なに普通に会話してんだよ!!」

『なに、このうるさいチビ』

「チビじゃねーし!」


いや、どっからどう見てもチビデショ

日向はほたるよりだいぶと背が低いんだし


「おーい!ほたるー!」

『いま行きます』

「じゃあまたね」

『うん、じゃあ。……蛍』

「なに」

『せいぜい狙われないようにね』


に、と僕と同じ顔で笑って背を向けたほたるに舌打ち一つ

なんかムカつく……


  * * *


「ほたる、双子だったんだな」

『えぇ、まぁ』

「本当にそっくりだよね」

『双子ですから』

「で、弱点は?」

『教えるとでも?』

「ちぇ。ちょっとぐらいいいじゃん」

『弱点を教えないといけないほど皆さんは弱くないんで』


だから教えません

そういってみんなを見る

別に身内だからって庇ってるとかじゃない

ただ自分と同じ人間が狙われたりするのが気に食わないだけ


「なぁんか、そんな風に言われたら頑張らずにはいられないなぁ」

『え?』

「だな、負ける気なんかねぇけど」

『え?』

「んで、めちゃくちゃあの眼鏡を狙っちゃう」

『クズですね、及川さん』

「なっ!?そんなことないよ!?」

「いや、クズだろ」

「岩ちゃんまで酷い!」

『どうでもいいんで早くアップ、お願いします』

「ほたるちゃんが冷たいー」

『もし負けたらラーメン奢りで』

「あ、じゃあ俺醤油」

「豚骨な」

「俺は味噌で」

「チャーハン追加な」

「あ、いいなソレ。じゃあ俺は餃子」

『金田一も言っておけば』

「いや、俺は……」

『国見は?』

「俺、いらない」

『あ、そ』

「ちょっとちょっと!及川さん奢るなんて言ってないからね!?」

「ごち」

「だから!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐ及川さんから離れる

いつも思うけどうるさいことこの上ない


「どうしてくれんの!?今月ピンチなのに!!」

『だからこそデショ』

「むきぃー!!」

『ぷ、子供みたいデスネ』

「うるっさいな!」

「………………、……」

「……、…………」

『?……どうかしました?花巻さん、松川さん』

「んー?別になんでもねーよ」

「気にしなくていいから」

『そうですか………?』


  * * *


「月島、双子だったんだな」

「まぁ」

「しかも青城のマネとか」

「そうですね」

「なんだよー!んなことちっとも言わなかったじゃねーか!」

「田中さん、痛いです」


ぐりぐりと鳩尾を拳で押さえてくるとか

というか言う必要とかないし


「やっぱ月島の双子なだけあって背が高いな」

「ほたるちゃんは185あるんですよ!」

「185!?」

「俺より高い………」

「マジかよ……俺にその身長分けろよ……」

「山口うるさい」

「ゴメン、ツッキー!」


満面の笑みとか

ただ謝ってるだけでしょ、山口のやつ

ていうか


「君相手ならほたるの身長だけじゃ足りないんじゃない?」

「な、なんだとおー!」

「元々がチビなんだから、ぷ」

「俺はチビなんかじゃなぁーい!!」

「いや、チビだろ」

「なんだと影山!」

「ってぇな!日向ボゲェ!」


よくやるよ

試合前から疲れないの

さすが体力バカ

なんて思ってると王様と日向越しに何人かの青城のメンバーと目が合う


「……………」

「ツッキー?どうかした?」

「え、なに」

「いや、なんか怖い顔してたから」

「別に」

「そう?」


ならいいけど

なんて言う山口に返事をしないでほたるを見る

すると青城のメンバーがほたるに気づかれないようにこっちを睨んできたりして

うわ、なんなのアレ


「ツッキー、本当に大丈夫?」

「大丈夫」


言いながらこっちを睨んできた奴を睨み返す


「………………ムカツク」


  * * *


『及川さん』

「……………………なに」

『ぷふ、ごちでぇーす』

「くっ!」

「っしゃー!食べまくんぞ!!」

「誰かさんが負けてくれたおかげだな」

『ですね』

「言っとくけど俺ほとんど試合に出てないからね!?」

『うわー。言い訳とか女々しくないですかぁ?』

「だって事実じゃん!俺が入ったときにはもう負けが見えてたじゃん!?」

「っすいません!及川さん!!俺っ!」

「きっ、金田一のせいじゃないから!土下座なんてしなくていいからっ!」

『あーあ、自分の実力のなさを後輩になすりつけるなんて……ホント、クズですね、クズ川さん』

「むっきぃー!!」

「うるせーぞクズ川!」

「岩ちゃんまで酷い!って、ちょ!?なんで手がグーに、いったい!!」


また殴られてる

いつものことだけどちょっと痛そう


「そんな憐れみの目を向けるぐらいならもっと俺に優しくしてよ」

『無理です』

「即答!?」

『当然ですよね』

「そんなわけないよね!?」


俺、主将なのに

なんて

泣いたふりとか気持ち悪い


「いますっげー失礼なこと思ったでしょ!」

『別に』

「嘘!絶対思ってたね!」

『例えば?』

「気持ち悪い、とか……?」

『自分で言ってて悲しくなりません?』

「なるよ!」

『デスヨネ』

「めっちゃいい笑顔!腹立つ!!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐ及川さん

あんなに休みなく話したりして疲れないのか


『なんとでも、あ』

「ん?どうかした?」

『…………すいません、ラーメンはまた今度お願いします』

「どうした?」

『蛍が迎えにきてくれてるみたいなんで』

「けい?って今日来てた双子か?」

『はい』

「ふぅん」

『どうかしました?』

「過保護なんだなぁ、と思っただけ」

『過保護、ですか』

「じゃなかったらこのタイミングで来たりしないって」

「だな」

「だよなー」

『ちょっとわからないですけど、すぐそこまで来てるみたいなんで失礼します』

「おー」

「また明日ねー、気をつけて帰るんだよー」

『わかってます。じゃあ』


みんなに軽く手を振って別方向へと進む

珍道中のラーメン

意外と美味しくて好きだからちょっと残念だったり

まぁ、今度奢ってもらえるしいいけど

なんて

さっきからうるさいスマホの通知を無視して歩いていたら目の前に真っ黒な影

傍目から見たらどこからどう見ても不審者なんだけど


「遅い」

『そんなに遅くはなかったデショ』

「返事ないし」

『すぐ会うのに返事とか必要?』

「必要に決まってるデショ」

『心配性』

「いいかげん自分が女だってこと自覚しなよ」

『…………………』

「返事は」

『そういえばクズ川さん達が蛍のこと過保護だって言ってた』

「話そらすなよ。てかなに?過保護って」

『知らない』

「は?意味わかんない」

『私もわかんない』


蛍のどこが過保護なんだか

普通だと思うけど


「あのさ」

『なに』

「ほたるっていつもああなの」

『ああって?』

「青城の人達と」

『そうだけど』

「ふぅん」

『なに?』

「別に」

『?』

「あんまり馴れ馴れしくしないほうがいいんじゃない?」

『馴れ馴れしくしてる気はないけど』

「ほたるはそう思ってても周りはどう思ってるかわからないデショ」

『そう……?』

「相手はクズ川だし」

『?』


歩きながら隣を見る

そこにはいつも通りの蛍がいて


「とにかくあんまりあの人達に近付かないようにしなよ」

『マネやってるんだから無理デショ』

「チッ、マネなんか辞めればいいのに」

『嫌だけど』

「チッ」


心底嫌そうな顔をしている蛍

やっぱりいつも通りだ

なんて

先輩達の言葉を思い出す

蛍のどこが過保護なんだか

過保護っぽいところなんて皆無だ


  * * *


「あーあ、ほたるも来たらよかったのにー」

「迎えに来てんのに無理だろ」

「だけどさぁ」

「てかあのけい?ってやつ、すっげー怖い顔してたよな」

「あー、練習試合の前だろ?」

「確かにしてたな」

「えっ!そうなんすか?」

「金田一の位置からは見えなかったかもだけどめちゃくちゃ睨んでたよ、俺らのこと」

「へぇー」

「ほたるも大変だな」

「だなぁー」

「なんでですか?」

「いや、だってあいつ絶対ほたるの番犬だろ」

「ば、番犬?」

「噛みつく気、満々だよね」

「見た目ひょろいのにな」

「…………ひょろひょろ番犬?」

「ぶっ!ちょっ岩ちゃん!?なんかツボりそうだからヤメテ!」

「ひょろひょろ?」

「ぶぷっ」

「番犬?」

「ぶはっ!!あっはははは!ちょ、ヤメテって言ったじゃん!」

「あ、でもよ犬じゃなくてカラスじゃね?」

「烏野だからっすか?」

「おう。ひょろひょろカラス」

「カラスって、ぶっふぉ」

「おい、いくらなんでも笑い過ぎだろ」

「っ痛い!殴ることないじゃん!岩ちゃん達が笑わせた癖に!!」

「知るか」

「むっきぃー!」


  * * *


「っへぶしゅ!」

『ぷ、なにそのくしゃみ。笑えるんだけど』

「……笑うなよ」

『だって面白いし』

「ずっ……クソ、あいつら………」

『あいつら?』

「………………なんでもない」

『?』



▽▽▽▽▽▽▽

なぜか蛍と同じ烏野には入学せず青城に入ったほたる。初めから男バレのマネージャーで手芸部との兼部はしていない。仲間が青城のメンバーなせいか蛍のような態度や毒舌っぷりを発揮する。特に及川相手にはそれが顕著。堅苦しいのが面倒臭くて人間関係は先輩だろうと適当。だけどちゃんと仲間のことは信じている。


初めまして菜ナ様。この度はリクエスト有難う御座いました!ほたるが大好きだといって下さりとても嬉しいです!この度はもしほたるが青城にいたらという、無自覚系過保護っぽい蛍と青城のメンバーと蛍っぽい性格のほたる、ということでそれ以外に特に指定はなかったのでこんな感じにしました。過保護なのが当たり前過ぎて、常に過保護なのが普通過ぎて、過保護を過保護と思っていないほたると蛍。みたいな。蛍がもっとガルガルしててもいいような気がしますが、とりあえずこんなもので、ど、どうでしょうか菜ナ様。気に入っていただけたならいいのですが……。淡く光るのほたるは蛍や山口以外にはだいたい大人しい態度をとっているのでこちらのほたるは違和感があるかもしれませんが少しでも楽しんで頂けたなら嬉しく思います。淡く光る以外にも連載しているものが多く更新が遅くなり申し訳ないです……。これからも気長に待って頂けると幸いです。コメント有難う御座いました!ではでは、これからもどうぞ宜しくお願い致します!


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