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□彼だけが知らぬこと
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「あれ?こんな早くになんの用だろ」


朝早くの体育館前

紙袋を持った女の子が一人

及川さんに差し入れかな?

でもちょっと早すぎ

嬉しいから別にいいけどね!


「おはよう」

『っひ!』

「………………え」


とびっきりの笑顔

自分で言うのもなんだけどカッコよすぎる顔で挨拶したらなんか悲鳴あげられたんだけど

しかもなんかすでに逃げ腰なのはなんで

あ!わかった!

ただの恥ずかしがり屋さんなんだね!


『あ、あ……』

「朝早くからありがとうね」

『っ』


言いながら一歩近付く

すると二歩後ろへ下がる女の子

ん?

どうして逃げるのかな?

しかも泣きそうな顔してるし


「大丈夫?どこか痛い?」

『あ………ぁ、ちか……づかないで』

「え」


ぐずりと鼻を鳴らして拒否られる及川さん



俺なにかした?

俺なにかした!?


「なにやってんですか?及川さん」

「助けて矢巾!」

「あ」

「この子なんか泣いてるんだけどどうしよう!?」

「どう、って……」

「ね?泣かないで、ほら」

「だっ、ダメですよ及川さん!」

「え?」

『ひっ、こ……こないで…………!!』

「…………ぇ」


なんで泣いてんのかわかんないけど取り敢えず安心させたげようと思ったのに

近付いたらおもいっきり拒絶されたんだけど!?

ガチ拒絶だよ!この反応!!

え、なに?

なんなの?

本当に俺この子になにかした!?


「及川さん!おはようございます!……って、なにやってるんすか?」

「あ!金田一に国見ちゃん!助けて!!」

「………は?」

「あ」

「なんかすっごい泣いてんの!この子!」


もう及川さんじゃムリ!

なんとかしようとすればするだけ酷くなっちゃう!


「泣き止んで!ね?」

『……っひ』

「駄目ですよ、及川さん」

「え」

「泣かせたくないなら取り敢えずその人から離れて下さい」

「え、どういうこと?国見ちゃん?」

「だから近付いちゃだめなんですよ及川さん」

「へ?なんで金田一まで」

「へ?じゃないです及川さん。早く離れてあげて下さい」

「矢巾?」


近付いちゃいけない?

離れろ?

なんで?


「その人は「俺以外の男が恐くて苦手だからだよ」

『一静さん!』

「はへ」


国見ちゃんの言葉を遮ったまっつんの声

突然のまっつん登場に間抜けな声しか出せない

しかもなんかまっつんってば女の子にべったりのし掛かってるんだけど

潰れちゃうよ?

というか言葉の意味がイマイチ理解できないんだけど

男が恐くて苦手?

ん?

どういうことカナ?


「いや、松川だけじゃねーだろ。この俺だってこいつの男嫌いから除外されてんだから」

「花巻、お前は除外されてなかったらただただ悲しいだけだろ」

「そりゃそーですけどね!」

「大丈夫だった?及川になにかされなかった?」

『はい、大丈夫です!』


さっきまでの泣き顔はどこへやら

満面の笑みでまっつんの頭を撫でてる女の子

アレ?

なんか及川さんの時と反応が全然違うんだけど?


「ん?目、赤くないか?」

『こ、これはその』

「さっき及川さんが迫ってましたよ」

「マジか国見」

「はい」

「えっ、ちょ!別に迫ってなんかないよ!?」

「でも嫌がる先輩に近付いてましたよね。矢巾さんも金田一も見ましたよ」

「……おいかわ…………」

「ひぃ!!」


見える!まっつんの後ろに般若が見えるよ!!


「お前マジでコイツになにしてくれてんの……」

「え!?マッキーまで!?」


まっつんだけかと思ったらマッキーにも般若が!!


「というか!ちょっと待って!!これどういうことなの!?及川さん全然わかんないんだけど!!!」

「こいつ俺の彼女。言ってなかったっけ」

「待って!待って!?いきなり素に戻んのやめよまっつん!てか彼女!?聞いてないよ!?」

「言ってないからな」

「だろうね!いつからなの!?」

「高校入ってすぐかな」

「なんでマッキーがこたえんの!?てか俺らもう3年だよ!?そんな前から!?」

「そっか、もうすぐ記念日だな。なにがいい?」

『私は一静さんと一緒ならなんでもいいですよ?』

「なら一日中部屋でゴロゴロする?」

『いいですね!それ!』

「リア充退散!滅しろ!!」

「滅しらねぇよ、黙れ及川。てか松川、門限は17時までだらな。忘れんなよ?」

「わかってるって」

「なにその幼稚園レベルの門限!ちょっと可哀想だよ!!てかなんでマッキーが門限なんていうの!?」


マジで話についていけない!

あと黙らない!!

というか回りで矢巾とかあと知らない間に部室から出てきた部員達がちょっと遠巻きに俺らの会話に頷いたりしてるけど

及川さん本当に話についていけないんだけど!?


「そんなんコイツが花巻の妹だからに決まってんだろうが、バカか」


………………………………………ぇ?


「岩泉はよーす」

「おう、はよ。なんだかんだ言って長続きしてんな、お前ら」

「これからも続くに決まってんだろ、バカ言うなよ」

「わりぃわりぃ。それにしても珍しいな、こんな早くから」

「そういえば。なにかあった?」

『あの、お兄ちゃんの忘れ物を届けに……』

「あ、もしかしてサポーターか?」

『うん、はい』

「わざわざありがとうな」

『ううん、バレー頑張ってね』

「おう、頑張る」

「ね、俺には?」

『い、一静さんも頑張って下さい!』

「うん、がんばるー」

「うわ、デレデレかよ」

「いいだろー?岩泉も早く彼女作れよ」

「余計なお世話だっての」

「あ、でもコイツはお前にはやらないからな、絶対に」

「誰がいつ欲しがったよ、バカが」

『あ、あの……』

「ん?どうした?」

『早く朝練始めなくていいんですか……?』

「お、そうだな」

「お前と話すので夢中で忘れてたわ」

『お兄ちゃんてば、もう』

「じゃあ俺ら行くから」

『はい』

「わざわざありがとな」

『ううん』

「じゃあな」

「また放課後に」

『はい!』


仲良く笑い合っているまっつんと女の子

そしてそれを見守る岩ちゃんとマッキー

……………え?

なにこの疎外感

てかあの女の子がまっつんの彼女でマッキーの妹?

というか岩ちゃんはそれを知ってた?

てか他の部員も知ってた?

矢巾とか国見ちゃんと金田一は確実に知ってたよね?

あれ

なにこの置いてけぼり感

ちょっと待って

俺主将なのにまさかの仲間外れ?

と、いうか……


「もしかして俺だけが知らなかったの!?」



▽▽▽▽▽▽

青城2年生の花巻の妹。小さな時から花巻に大事にされ続け男の子から徹底的に守られていたため父と兄以外の男が苦手になってしまった。松川とは3年目で、中学時代の花巻妹をたまたま花巻の家で見てから一目惚れで大好きに。そうして松川が並みならぬ努力(自分に対しての苦手意識を時間を掛けて和らげ、鬼のような花巻を好物で釣って時間を掛けて懐柔させて)をし晴れて彼氏彼女に。本来であれば女子校に入学する予定だったが松川と同じ学校に通いたくて青城へ。バレー部員は及川以外の全員が花巻の妹で松川の彼女だと知っている。ちなみに溝口くんに監督も。男の人が苦手だがほどよく距離を置いてくれる優しい岩泉はそこまで苦手ではなかったり。松川にとっての最大の敵は及川ではなく岩泉。

ゼシカ様お久しぶりです!この度はリクエスト有難う御座いました!ゼシカ様のリク内容を見た時この作品の大体のプロットが頭に浮かび、これはもう応えるしかない!と使命を感じました!なにも知らない及川と松川の彼女で花巻の妹(男の人が苦手)とのことでこのようなお話になったのですが、どうでしょうか………?このような感じの男の人が苦手な花巻妹となったのですがご希望通りだったなら幸いです。相変わらず及川が可哀想な扱いですが楽しんでいただければと思います。毎度のことですが更新が遅く申し訳ないです……。これからも更新は続けますのでどうか気長に待っていただければ嬉しいです。最後にリクエスト有難う御座いました!ではでは、これかもどうぞ宜しくお願い致します!


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