シリーズ2(HQ)

□の裏話
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【1】


「でよー縄初がさー」

「はいはい」

「あかーし!ちゃんと聞いてんのかよ!」

「聞いてますよ、もう10回も」

「あれ?そうだっけ?」

「そうですよ」


早朝の部室

隣で着替える木兎さんに絡まれる

木兎さんの口から出てくる言葉は席替えで後ろの席になったというクラスメイトの名前ばかりで

いい加減聞き飽きた上に名前を覚えてしまった


「木兎さんと違って縄初さんは頭がいいんでしょう?」

「そうなんだよ!めちゃくちゃ頭いいの!」

「それに優しいんでしょう?」

「そうそう!この前だって消しゴム貸してくれたし!」


それも耳にタコができるぐらい聞き飽きた

もう一週間前からずっとこうだ

自覚があるのかないのか

きっとないんだろうけど


「縄初ってよーなんつーかこう、おとなしい?感じがするんだよなー」

「へぇ」

「騒いだりするタイプじゃねーつーか」

「ふぅん」

「マジメ、ってやつ?」

「そーなんですか」

「前にたまたま見たんだけど昼休みとかも一人で静かにメシ食ってたりしてよ、なぁんか気になるんだよなー」

「…………………はぁ」

「なぁ、木兎」

「んお?」


木兎さんの隣で着替えていた木葉さんからの目配せ

着替え中の木兎さんは気付いていない


「悪いけど今日一緒にメシ食えねーわ」

「なんか用事か?」

「なんでもいいだろ。とにかく一緒に食えねーから」

「えー」

「ちなみに他の奴も一緒に食えねーからな」

「はぁ?」

「だから今日は一人で食えよ」

「なんだよー、一人とか寂しーじゃねぇか」

「たまにはいいだろ」

「うー………あ!赤葦!」

「俺も無理です」

「みんな冷たい!」


そう叫んだ木兎さんはぶーぶー言いながら先に部室から出ていく

ここでいいですよなんて言えるわけない


「有難う御座います、木葉さん」

「いいって。いい加減うるさかったし」

「確かに」

「まぁ、どっちにしろうるさいだろうけどな」

「それはそうですね」


これで木兎さんがどう動くかだけど

なにも考えずに縄初さんに話しかけそうだし

まぁ、それが狙いなんだけど

どちらにしろ面倒臭いから放っておこう

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