淡く光る

□牛島
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【1】


『あの』

「?」

『落としましたよ、これ』


振り返ると目の前に背の高い女

両手一杯に抱え込んだテーピングやサポーターを見て先ほど自分が購入したものだと理解する

どうりで軽いわけだ

手提げ袋が破けて中身が半分以上減っている


「………あぁ、すまない」

『いえ』

『よかったらこれ使ってください』

「いいのか?」

『はい。それじゃ持って帰るのは大変でしょうから』

「すまん」


透明なビニールの手提げ袋を受け取る

予備だろうか?

用意周到だな


『…………』

「?」

『あの……怪我をしているようなので、そこ』


そこ、と指差されたのは親指の付け根で

いつの間に怪我をしたのか

少し血が滲んでいる


『これもよかったら使ってください』

「絆創膏か……すまない、ありがとう」

『いえ。では失礼します』

「ん、あぁ」


ぺこりと小さく頭を下げて歩き出す女

手元の絆創膏を見る

枚数は一枚かと思ったがよく見れば二枚で

予備までくれたのか

本当に用意周到な女だ


「………待て!」

『?』

「名前を教えてくれないか?」


後ろ姿を追いかけて思わず呼び止める

今、このまま離れてしまったらもう接点が無くなってしまいそうで


「今度、礼をしたい」

『はぁ?』

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