淡く光る
□黒尾2
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【1】
『………………』
夜の10時
いつものように鳴る着信を知らせる音
誰からかなんて見なくてもわかる
毎日欠かさず電話を寄越してくる人は一人しかいない
それを無視して3日目
初めに無視した日からメールが何通もくるようになった
心配する内容ばかりのそれも無視したまま
完全なる無視
こんなことしちゃいけないってわかってる
だけどいまさら電話に出ることもメールを返すこともできない
"次会った時にはぜってー俺のこと好きだって言わせてやる"
不敵に笑うその人の瞳
獣のようなそれを思い出す
東京への合宿が決まってから頭から離れてくれない
急に恥ずかしくなった
次、だなんて宣言されて平気でいられるほど経験があるわけじゃない
というかむしろ初めてのことでどうすればいいかなんてわからない
どのみち合宿には参加するんだから会うことにかわりはないのに
いま無視しても意味なんかない
いつもみたいになんでもないようなふりをすればいいだけ
たったそれだけのことなのに
『黒尾さんの馬鹿……』