おかえり
□1日
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目を閉じれば、鮮明に思い浮かぶ。
あの時の彼等の背中を。
私を一人置いて、大切なものを護る戦いへ行く彼等を。
だんだん小さくなっていく背中を消えるまで見ていたあの日を、私は忘れない。
あれから、20年近くたった。
最後に聞いた彼等の言葉からもうそんなに年月が過ぎた。
今でも、私は一人ここで待ち続けていた。
この、彼等と過ごした自然が豊かな、戦が始まった頃と何も変わらないこの場所で。
戦が終わって随分と経つようだけれど、彼等はどうしているんだろう。
生きているのかさえこの場所では分からない。
それほど、この場所は戦とは無縁の場所なのだ。
このまま、ずっと待ち続けていれば彼等は戻って来てくれるのだろうか。
……本当に?
あと、何年?
あと何年待てば私の処へ、この場所へ帰って来てくれるの?
せめて、せめて
生きている事だけでも確かめたい。
信じていないわけじゃない。
ただ、どうしようもなく不安なだけ。