【Escapism】
□運命なんてない
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「もしもし?ううん、大丈夫。今日の飲み会?うーん…いや、具合悪いとかじゃないんだけど…今回も欠席で。ごめんごめん、怒らないでよ。また飲みに行こ?出来れば、野島さんいない時に…。ううん、なんでもないよ。本当にごめんね。うん、楽しんできてねー…」
「…今の電話、よっちん?」
「え!?野島さん!?」
「よ。偶然、駅で見かけたから追いかけてきたんだけど…」
「わ、あ、その…」
「…今日来ないの?」
「は、はい…」
「そっか。残念」
「…ごめんなさい」
「また飲もうね…って、ちょっと無理か」
「あ、その…さっきの電話で言ってたことは違っ…」
「あの、さ…その…俺は別に怒ってるわけでも問いただしてるわけじゃないんだけど…」
「…」
「…ただちょっと、寂しいなって」
「…」
「だからさ、その…顔上げてよ、ね」
「…」
「…」
「…っう」
「え…?」
「ちが、くて…」
「わ!な、泣かないで!大丈夫!大丈夫だから!ごめん!大丈夫だから!」
「うっ…ごめん、なさい…のじ、まさんに会いたくない、わけじゃなく、て…」
「うん、うん、もう大丈夫だから」
「むしろ、その…逆…で…」
「逆…?」
「…本当は、ほ、ほんと、うは…」
「…うん」
「…会いたくて」
「…」
「でも、会えたらもっと…気持ちが、と、止められなくなり…そうで」
「…」
「いっ、今のみんなとの…今の野島さんとの関係全部がなくなっちゃうのが怖くて…」
「…」
「でも野島さんのこと好きなのも止められなくて…」
「…」
「…だから、離れようって、思って…。野島さんから…」
「…」
「こ、こんな自分勝手な、こ、こと言われたって…こま、困りますよね…私、帰ります…」
「…」
「今なら、間に合うから…まだ、止められるから…」
「…帰さない」
「わっ…」
「そんなこと言われたら、帰せないでしょ…」
「…泣いて、困らせちゃってすみません、野島さん優しいから…ほっとけ…ないですよね…」
「違う!」
「え…」
「…好きだから、帰せない」
「…す、き?」
「…俺は君が好きだよ。いつも君に会えるの楽しみにしてた」
「え…」
「なまえが好きだよ…あーダメだ、恥ずかし…」
「の、野島さんが…?」
「そうだよ、何回も言わせないで…」
「…わたし、夢見てるのかな…」
「おーい、勝手に夢にしないでくれる?それとも…夢だったことにして、俺のこと…好きなの、やめちゃうの?」
「え…」
「…ね、俺のこと…好き?」
「…」
「…」
「…き」
「ん…?」
「…大好き」
「!!」
「…です」
「それは…反則だろ…可愛いすぎ…」
「…嬉しくて死にそう」
「俺も。これからその…よろしくね」
「…はい!」
「…運命なんてないと思ってたけど」
「はい?」
「今日ばっかりは信じてもいいかもな」
「…はい!」
「よーし!こんな運命的な日は、サボるに限る!」
「ん?」
「…もしもし?あーよっちん?ごめん、今日俺も行けなくなった。いや体調悪いとかじゃないんだけどさ。ごめんごめん、今度奢る。え?俺"も"行けないってどういうことかって?そりゃー…運命に導かれたって感じかな!それじゃ、また今度!」
「ふふふ。今度、本当にお詫びとお礼しにいかなきゃ」
「お礼?」
「うん、ふふ」
「なんのお礼?」
「…私と野島さんを、会わせてくれてありがとうって」
「…そうだね。大感謝だ」
「今度いっしょに行きましょうね」
「うん、お礼参りだ!」
「それちょっと違う」
…end.