【Escapism】
□簡単な嘘くらい見抜いてよ。
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「そういえばさ」
「何？」
「ずっと気になってたんだけどさ」
「何だよ、勿体振るなよ」
「俊樹の好きな人って結局誰なの？」
「はい？」
「いるって言ってたじゃん」
「…まあ、言ったけど」
「あとずっとミキちゃんのことが好きだって言ってたよね」
「…あー、どうかな」
「でも噂でミキちゃん、俊樹に告白してフラれたって聞いたんだけど。辻褄合わなくない？」
「はあ…」
「何のため息？」
「いや、別に。質問返しするんだけどさ」
「あ、ずるい」
「まあまあ。なまえって俺の好みのタイプ？って知ってる？」
「知ってる、好きになった子がタイプって言ってた」
「正解。そこは合ってるんだよな〜」
「だってそう言ってたし。というか『そこは』ってどういうこと？」
「質問多いなー」
「だって俊樹が言ってること、なんかずれてるし。本当はミキちゃんともう付き合ってる？」
「あはは、やたらそこ突っ込んでくるのな。そんなに気になる？」
「…うー、うん」
「…ふ、俺ってミステリアスだからさ」
「それは違うと思うけど…」
「ソッコー否定するなよ」
「まーでも、今の俊樹は謎が多いから、ミステリアスなのかもしんない」
「じゃー俺の謎解いて。謎解きして」
「ええ！？ずっと考えてるけど分かんないよ」
「…フッ」
「何でそんな嬉しそうなの」
「…そうやってずっと俺のことで頭いっぱいにしてりゃいーのになと思って」
「ん？本当にずっと考えてるけど？」
「…そーですか」
「今度は何で照れてるの？」
「もーお前何で何でうるさい…」
「だって分かんないんだもん…」
「じゃあおさらいしよう」
「はい」
「俺は好きな人いるよ。それは合ってる」
「うん」
「じゃあ、その好きな人の特徴を振り返ろうか」
「もう、そっちこそ勿体振るじゃん！」
「怒らない怒らない。リラックスしてください？」
「…じゃー振り返ってください」
「まず一つめは優しい。誰にでも分け隔てなく接してる」
「ほうほう」
「二つめは、ちょっと天然？かな」
「あー、ミキちゃんちょっと天然さんなところある！」
「…はい。三つめはニブい」
「ニブい？」
「うん、ニブい。四つめは大胆なところと、控えめなところがあって目が離せない」
「ふうん…」
「五つめは、笑った顔が、抜群に可愛い」
「…そう」
「六つめは、」
「うん！分かった！！もういいや…」
「分かってない。ちゃんと聞け」
「…やだ」
「…六つめは、」
「やだってば…」
「お前から言い出したんだろ、俺の好きな人知りたいって…」
「そうだけど…。だって…もう…なんだもん」
「何…？」
「…辛いんだもん…俊樹が、幸せそうに、好きな人のこと話してくれるの…」
「…」
「…ごめん」
「謝られること、してないだろ」
「…」
「…俺の好きな人の最大の特徴は、素直すぎるところ」
「…そうなんだ」
「素直すぎて、俺の言うこと何でも信じちゃう。あれ？誰かと一緒だな」
「…誰？」
「なまえとか？」
「だって好きな人の言うことは信じちゃうでしょ！」
「え」
「え？」
「お前、今、好きな人って言っ…」
「え！？あ！！ち、違うよ！？違う違う違う！！」
「…マジで。」
「…ミキちゃんと付き合ってるのにごめん。伝えるつもりなかったのに…」
「はい、いったん止まろうなまえちゃん」
「え？」
「まずミキちゃんと付き合ってないから」
「だってミキちゃんのこと好きなんでしょ？」
「…」
「俊樹、言ってたし…」
「そこだよ。前にもお前、俺の好きな人当てるーって言い出したことあったよな」
「う、うん」
「その時にお前のこと好きだって言おうと思ったのに、お前女友達片っ端から言う癖に、全っ然お前に辿り着かなくて。結局二時間ぐらい言ってたよな？だからちょっとイラッときて、その時にちょうどお前が言ってきたミキちゃんが好きって言った」
「え！？わ、私のこと好き！？」
「そうだよ、すぐバレると思ったのにご丁寧に信じ込みやがって…。簡単な嘘くらい見抜けよ」
「いや難しいよ！全然簡単じゃないし！！」
「やーっと解けたよ…」
「俊樹の謎が…」
「違うよ。誤解が。」
「ミステリアス…」
「無視すんな。まあ、だから俺の好きな人の話聞いても、何も辛くなることないから」
「…」
「う…」
「…顔真っ赤」
「…」
「…可愛い。好きなとこ増えた」
「…」
「…ない」
「え？」
「私天然じゃない！！」
「そこ！？」
「それだけは素直に聞き入れられない！！」
「天然が天然って認めないのはお決まりだからな…。これからゆっくりなまえが天然だっていうのは教えてあげるから、なまえも俺の好きなところ教えてね」
「いっぱいありすぎて寝られなくなっちゃうよ？」
「…意味分かって言ってる？」
「え？」
…end．