小説
□そのアト何?
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「光忠」
「うん? どうしたの倶利伽羅」
「その赤いの誰にやられた」
──はい?
時は遡り数刻前。
庭では喧しいほど鳴く蝉の声に、水遊びの真っ最中の短刀たちのはしゃぐ声。
庭に面する屋敷の縁側ではまた他の刀剣がのほほんと冷茶を飲み、この時期に嬉しい西瓜をしゃくしゃくと頬張っている。
「それにしても暑いね」
審神者から支給された薄い生地のシャツの首元をぱたぱたと動かして風を取り込む光忠。
「うちにもエアコンとかいう物欲しいですよね」
「止まらない近代化」
寝転ぶ和泉守と山姥切にうちわで仰いでやるのは堀川。
「夏、嫌いじゃないけど如何せん暑いからね」
虫も出てくるから嫌になるし、と溜め息を漏らす光忠に。
「燭台切さんは肌色白いですから蚊に刺されると目立ちますね」
堀川は苦笑を返す。
「今の時期床で痕を付けられたら隠すのいつも大変そうですし」
くすくすと笑う堀川に、光忠は頬を真っ赤に染めた。
「あ、刺されてた」
無意識にぽりぽりと首筋を掻いていた光忠は、部屋の鏡を見て確信。
ぷっくりと小さく腫れて赤く染まったそれはこの時期に鬱陶しい奴によるものだった。
「んーもう、塗り薬……」
「ただいま」
開け放ってある障子の方を見ると、遠征帰りの彼の姿。
ふにゃりと笑んでおかえり、と返す。
「お疲れ様倶利伽羅、冷茶持ってこようか」
「ん」
短く返されたので、薬は後回しで厨へ向かおうと、大倶利伽羅とすれ違うようにすると、腕をがっと掴まれた。
「おい」
「え、なに? 」
「なんだソレは」
「それ? 」
指先を例の痕へと当てられる。
嗚呼それか。
「これはね」
「誰にやらせた」
「え? 」
「誰がつけた」
「はい? 」
どうやら勘違いをしている。
「聞いて倶利伽羅」
「誰だ、言え、俺が斬る」
「蚊だよ」
「そうか蚊か、え? 」
デコピンを一撃お見舞いする。
全くもう倶利伽羅は。
でも嫉妬してくれて有難う。
|ω・`)このあとめちゃくちゃ説明した。