ひだまりの日々[完結]

□九刻
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 「して、名無し。昼間の当たりくじの願いだが……」

 「決まった?!何にするの?」

 「……その……名無しの手に触れてもよいか?」

 「えっ」

 「昼間、小妖達が名無しの手を繋いでいるのが楽しげでな……少し羨ましかったのだ。」

 「そんな事でいいの……?」

 「それしか思い浮かばんのでな……」

 「土蜘蛛は欲が無いね。私だったら甘いお菓子たくさん食べたい!とか言っちゃうのに。」

 (……吾輩の本心を知ったらどう思うのだ名無し。)

 「甘味よりも今はこちらだ……」

 普段よりも低く響く言葉と共に縁側に置かれた名無しの指をすくうようにそっと持ち、細く柔らかい感触が愛おしくなり親指で名無しの薬指を撫でた。
 ひくりと返ってきた反応が甘味よりも甘く、痺れに似た感覚が広がり満たされていった。

 手は繋がれたまま、視線は揃って賑わう中庭へ。
 騒ぐ皆の声は耳に入らずに暖かな沈黙が二人を包み込んでいた。

 (……どうしよう……なんだかドキドキしてきちゃった。きっと花火のシチュエーションに酔ってるんだよね!
心臓の音気づかれませんように。)

 (夕闇時で助かった。腑抜けた顔を名無しに見られずに済んだ。
……して、いつ手を離せばよいのだ……ずっとこうしていたいが名無しは気を使っているのだろう。
くじ引きのルール上、仕方なしといった所だろうな。)

 そんな事を思いながらも振り払わずにいてくれる名無しに甘んじて手を離さずにいた。
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