ひだまりの日々[完結]

□十一刻
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「よう。二人とも久しいな。書は出来ているな。」

「はい、大王様。」

「あぁ。出来てるぜ!」

提出された書に目を通すエンマ大王。土蜘蛛の書を一通り目を通すと、大ガマの書に手をかけた。

「はぁ。土蜘蛛の書はいつも通り完璧なのに大ガマのはいつもに増して字が汚ねぇな……。」

「最近またちょーっと忙しいんだよなー!」

「お主は大王に向かって!!」

「あぁ、例の女だろ?
ぬらり、この書を棚に置いてくれ。」

「御意。」

「なんだ!もう知ってんのか!」

「俺の地獄耳を甘く見んなよ!
……と、言いたいところだが、この前お前のとこのキュウビが愚痴ってたからよ。名無しって言ったか。」

「そーなんだよ!久々にこっちに来てしばらくいるんだよ!泊まってんのが土蜘蛛の屋敷ってのが気に食わねぇんだけどな。」

「そうか。二人ともあんまり情を移し過ぎるんじゃねぇよ……。」

「なんでだよ!アイツは俺の嫁にすんだよ!」

「大ガマ!!」

「お前達と人とは生きてる間、流れる時間が違うからな……最後は両者共に辛くなるぞ。」

「んなことねえって!名無しが死んだら俺が妖怪にしてやるんだよ!そしたらずっと一緒にいられるじゃねぇか!」

「そんな簡単なもんじゃねぇだろ?お前は気楽でいいな。」

頬杖をつくエンマ大王は更に続ける。

「人は何か大きい思い抱えて死んだやつが怨霊、または妖怪になるんだよ。まぁ、例外もあるがな。
お前が気に入ってる所を見るとその女はただならぬ念持ってるような根暗なやつじゃねえだろ?」

「そうだな。どっちかというとよく笑ってんな!」

「そういうやつは死んで極楽行って輪廻転生するのが一番なんだよ。
お前達が気にかけてる女がどんなやつか閻魔堂の天獄振り分の儀で会うのが楽しみだ!」

「転生しちまったら何処にいるかわかんなくなっちまうじゃねぇか!」

「そうだな。探し出すのは至難の技だ。けど、それが自然の摂理だ。」

「転生なんかさせねぇ!そうか、大きい思いか……。
よし!死んだら俺に会えなくて嫌だー!!って念に変わるくらい惚れさせるしかねぇな!」

はっはと苦笑するエンマ大王。

「お前はほんと見てて飽きねぇな大ガマ!
他にも方法が無いことは無いが、教えるとろくな事にならなそうだからやめる!そいつの一生が危ねぇからな。言わん!」

「はぁー?!ケチ臭せぇ事いうなよ!教えろっ……」
「大ガマ!もう帰るぞ!!
客人が居る故にこれにて失礼致します大王様。」

騒ぐ大ガマの首根っこを引っ張り部屋を出ようとするのだった。
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