ひだまりの日々[完結]
□三刻
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屋敷から平釜平原までの山道を歩く。
夏の日差しは眩しく、蜘蛛の妖は苦手な方。
何の変わりもない歩きなれた山道、木々の隙間から地面に降り注ぐ木漏れ日ですら鬱陶しく思うところ、今は美しくすら見えた。
(名無しとは二人きりでは話した覚えなどなかったな……吾輩が迎えになど行って、えんらえんらの言ったようにはたして本当に喜ぶのだろうか。)
(さて、会った時には何と話をしよう……っ、何を思っておるのだ!うろたえてなどおらんぞ……。)
名無しは我々を覚えているのか、こちらにいるのだからそれは心配ないなど、そんな思いがぐるぐると巡る頭の中。
無意識に歩む速度が速くなっていた。