ひだまりの日々[完結]
□五刻
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夕方過ぎに始まった宴、初めは5人だったが妖魔界での仕事を終えたオロチも加わり6人へ。
そして、次から次へと屋敷での宴を聞きつけた妖怪達が集まり、かなりの大人数になっていった。
「この様な宴会は年末年始以来だな。本家の者も来ている事を考えるとその時の人数以上か。」
「そうですねぇ〜親方様〜。名無しが来てくれるのを皆待っていたのですね〜。」
名無しは今や、駆けつけた妖怪の輪の中心でにこにこと笑みを浮かべていた。
「名無しちゃんあいたかったズラよ〜!
おらのことわすれちゃったのかとおもってぇさびしくてぇ名無しちゃんさがしににんげんかいにもいったズラがまいごになっちゃったんズラ〜!
だからぁいまあえてすごくうれしいズラー!!」
「本当にごめんね。皆がこんなに私の事思ってくれたなんて解らなかったの。皆怒ってるものだと思ってたから……」
「そんなの!おもってるにきまってるズラー!ともだちズラー!もうどこにもいかないでほしいズラー!!」
涙ながらに抱きついたコマさんにつられ、お酒も嗜んだ後の名無しの目からは大粒の涙が零れた。
「うん……ありがとう。」
「なんだか宴の席が湿っぽくなっちまったなぁ!」
2人の前にしゃがみ込む大ガマ。
「なぁ、名無し。
人間のお前はこの数年間は長い時間に感じただろうが、何百、何千年と時を過ごす俺らにとっちゃ瞬きする間くらいにしか感じないんだぜ!そんなんでヘソ曲げる奴なんているかよ!」
「そうだぞ名無し。今回は大ガマと同感だ。」
(大ガマめ、良くもああも口がまわるものよ。口下手が嫌になるわ。)
そんな土蜘蛛の心境の中、大ガマは名無しの頭を撫でた。
「だから、もう気にすんなよ!」
ニッと笑う大ガマを見てますます込み上げてしまい、えんらえんらが手拭いを差し出した。
「本当に皆ありがとう。大ガマも優しいのは変わってないね。」
「だろぉ?惚れ直したか?!なら俺の嫁になれよ!」
むっ!と思った土蜘蛛だったがそれよりも先に……
「だめズラー!名無しちゃんはおらのおよめさんになってほしいズラー!!おおガマたいしょうさんにだって……ま……まけないズラよ〜!」
突然名無しの前に仁王立ちした想定外の相手に大ガマも目を丸くしたが
「あっはっは!!いい女には沢山のライバルがいるもんだよな!
いいぜー!お前がしゅらコマくらいの力つけたら勝負してやるぜ!」
「わ……わかったズラ!まけないズラよー!!」
やっと笑いだした名無しを見て安堵するが名無しを廻っての一件は複雑。
だが密かにコマさんを応援してしまった土蜘蛛だった。