ひだまりの日々[完結]
□六刻
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大ガマが帰り、一人自室に戻った土蜘蛛。
名無しがこの屋敷にいるとは実感がなく、居ても立ってもいられずそっと抜け出し名無しの居る部屋へ足を向けた。
部屋の前へ来て薄く障子を開けると名無しが寝息をたてて寝ていた。
昼間に見た寝顔だったが化粧気がなく少し昔の顔に近づいたような気がしてじっと見ていたが、障子から差し込む月明かりの光が眩しかったのか向こう側へと寝返ってしまった。
光に照らされて着崩れた浴衣から白く浮かび上がるうなじにまたもやドキリとしてしまった。
(よからぬ事を考えるでない……。)
ずっと名無しが来てくれる事を想い続け、今、名無しを帰したくない気持ちに気づきそっと障子を閉めようと手をかけた時。
「親方様〜?」
「おぉ!!?えんらえんら!!」
「何をされて〜…………あっ。
もしや名無しを夜這いに……。」
「ちっ、違う!!」
「照れなくてもいいんですよ〜うふふ。」
「吾輩は大ガマのヤツとは違うぞ!」
「わかっていますよ〜親方様がどれだけ名無しを待っていたか私が知らないはずないですもの〜。
でも、まだ少し早いと思いますよ〜ふふふ♪」
「だから違うと言っておろう!断じて違う!ただ、今宵はバタバタしておった故、ゆっくり話でもできたらと……」
「うふふ。そうですか〜。」
「ちっ違うからな!」
月明かりが照らす廊下を自室にむかう土蜘蛛の足音が鳴り響いた。
(うちの大将さん、あんなに可愛らしい人だったかしら〜?ふふふ♪)