ひだまりの日々[完結]
□九刻
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土蜘蛛の屋敷に着いたのは辺りは薄暗く夕暮れ時。
「ただいまー。オロチ遅くなっちゃってごめんね!」
「今、戻ったぞ。」
「大将殿お帰りなさいま……」
「名無しー!!」
オロチよりも先に出迎えたのが大ガマ。
「来てたんだね!大ガマも遅くなっちゃってごめんなさい。」
「おせーよー。昼頃からずーっと待ってたんだぜー。」
「本当にごめんね。あっ、大ガマにお土産あるんだ。本家のお饅頭。たしかこしあんが好きだったよね!はいこれ。」
「マジかよ!よく解ってんな〜!さすが俺の嫁になる女だぜ!!」
「わっ!」
ぎゅっと名無しを抱き上げ一周してみせた。
「何をしておる!離れんか大ガマ!」
「いいだろう少しくらい!!今日一日中名無しを独占しやがって!」
「戯け!独占していた訳ではないわ!!」
「だとしても、一緒には居たじゃねーか!俺は名無し不足なんだよ!」
そう言うと名無しに髪をすり付け、尚も抱き締めつづけた。
「ちょっと苦しいよ。」
「名無しだって嫌がっておるだろう!!」
「嫌よ嫌よも好きの内って言うだろうが!」
「まったくしかたないね。」
一緒に来ていたキュウビがパチンと指を鳴らすと狐火がチリッと大ガマの髪を焦がした。
「あっつっ!何しやがんだキュウビ!!」
「もうこれ以上くっついてたら名無しが窒息しちゃうと思ってね。」
「あはは……キュウビありがとう。」
「名無しも思いっきり抵抗しなよ。じゃないとあの人どんどんエスカレートするからね。」
「うん。」
苦笑する名無しの横で
「お主は前にも言ったが行動を慎め!」
「あぁ?!そんなに名無しを独り占めしたいのかよ!ケチなジィさんだな!!」
いつもの騒ぎが始まりつつあった。
それを止めるべく名無しが案をだした。
「今度ね、皆でやろうと思って花火沢山買ってきたの!
丁度みんな集まってるし、夕方だからこれから花火しない?」
「わー!沢山ですね!!」
「おらもやりたいズラー!」
「俺、このロケットのがいいなぁ!」
小妖たちが花火に群がる。
「花火か!俺様の術の方が派手ですげーけどな!よっしゃ!皆でやろーぜ!!」
大ガマの興味が花火に移り、広げた花火を抱え中庭へ小妖達と走り出した。
「まったく落ち着きの無い……名無しも大丈夫か?」
「うん、大ガマ昔からいつもあんな感じだったから全然平気。それにいつもキュウビが止めてくれるしね!」
「そうか、キュウビが一緒であれば安心であるな。」
(大ガマめ……昔からああも名無しにベタベタしておったとは。心情は昔とは多少は違うと思うが……それは吾輩も同じか。)
一同は中庭に場所を移し小さな花火大会を始めた。