ひだまりの日々[完結]
□十刻
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翌朝。
空はやっと白んで来た時刻だが、目が冴えてしまった名無し。
(昨日、手を繋いだだけじゃない。それだけなのに……)
じっと手を見つめ、それから瞳を閉じてみるもどくどくと鼓動は静かになってはくれなかった。
(私って惚れっぽいのかな……)
そんな事を微かに思い微睡みの中へ再び落ちていくのだった。
数時間寝直し、台所へ行くとえんらえんらがもう朝食の準備をしていた。
おはようと挨拶をし手伝う事にした。そして話題は昨日の事に。
「あのね、えんらえんら。
私、昨日の夜に土蜘蛛と手を繋いだ時から何かおかしいの。」
「あら〜知らなかったわ〜。親方様も頑張ったのね〜。」
「頑張ったって?」
「親方様、名無しが来てから様子がいつもと違うのよ〜。」
「気を使わせちゃってるのかな……」
「いいえ〜。親方様とっても楽しそうよ〜。」
「それなら良かった。土蜘蛛、何も言わないけどいつも周りに気をかけているよね。」
「そうね。自分の事より私達の事って時の方が多いわね〜。
だから、本家との合戦の時には驚いたわ〜。親方様も自分の事で争うなんて〜。怪魔の仕業だったけれどね〜。ふふふ。」
「お饅頭で合戦が起きるとは私も思わなかったなぁ。
そんな理由でも皆が協力したのって土蜘蛛が慕われているからだよね。」
「そうね〜。あまり自分の事は言わない親方様だから皆もよしと思って協力しちゃったのね〜。今となってはおかしな話ね〜。」
「皆、土蜘蛛が好きなんだね。」
「名無しはどうなのかしら〜?」
「えっ?!」
そんな話をしながら朝食を作り終えた。