ひだまりの日々[完結]
□十六刻
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「親方様!お茶が〜!!」
食後、自分で注いでいたお茶を茶碗いっぱいに溢れさせている土蜘蛛。
「すまない!!吾輩が片付ける!」
「いいですよぉ〜。それより自分の事をなさってくださいね〜。お茶は入れてお部屋へお持ちしますから〜。」
(親方様……気分転換なさってくださいね〜。)
いつもの習慣になっている物書きをするよう促すえんらえんら。
「では、そうするとしよう。」
照れ隠しなのかぼーっとしているのか、淡々と言い放ち席を立って部屋へ向かった。
(親方様大丈夫かしら〜?)
胸騒ぎがして手早くお茶を入れ直し、部屋へ急ぐえんらえんら。
「親方様〜お茶をお持ちいたしました〜……親方様〜!!」
障子を開けると筆を持ったまぼーっと固まる土蜘蛛。
筆が下を向いていたために袴に墨が黒色の大きな染みを作っていた。
「これは!すまぬ!っあ!!」
突然びくりと動いた拍子に机の端の墨壺までひっくり返し畳へぶちまけてしまった。
(これは大丈夫じゃない方ですね〜親方様〜。)
召し物を変えた土蜘蛛。
「えんらえんらよ。今朝から面倒をかけてすまぬな。」
「いいえ〜私は親方様にお仕えするのがお仕事ですから〜。親方様の袴、お洗濯しておきますね〜。」
「あぁ、手を煩わせてしまうな。」
「いいんですよ〜。お部屋も綺麗に致しますから、親方様はお庭に出てみてはいかがですか〜?日差しもあまり強くないいいお天気ですよ〜。」
「そうだな。水やりでもするとするか……。」
そう言って庭に出て盆栽用の如雨露を持ち準備をする土蜘蛛。
それを見届けてから洗濯場へとえんらえんらは足を運んだ。
さぁ、いざ洗濯をはじめようとするその時、
「えんらえんら殿!親方様が!!」
オロチが声をあげ部屋へと飛び込んできた。
急いで中庭に向かうと、
「親方様が先程からああやって空の如雨露をずっとふっておられるのだ。」
「オロチは出かけていて知らなかったのね〜。実は朝からあんな感じなのよ〜お痛わしいわ〜。」
とうとう二人は見ていられなくなり、お茶をしようと土蜘蛛を誘うのだった。