かえるのお姫様
□2days
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「あっちぃ〜。なんだよこの暑さは!!」
うんがい三面鏡を潜りどうにか桜中央シティにたどり着いたが、季節は8月末。
平釜平原とは段違いの気温の最中、見慣れない土地で慣れない人変化を続け知らず知らずに大きく妖力を使い続けていた。
「女郎蜘蛛の地図どっちが上か下かわかんねぇな。さすが女子!
……って男だったっけなぁ。
あー。頭も回んねぇ……」
へたへたと歩いていたが、炎天下にやられついに倒れ込み、それと同時に僅かな妖力しか残らない大ガマは小さなガマガエルに姿をかえてしまった。
変化が解けた際、幸い人目につかなかったが道路にぺたりと腹這いにへばりついたまま動けずにいた。
(道路まであっちぃ〜。このままじゃ干からびちまう。どうすっかなぁ……)
通り掛かる人は皆、単なる蛙にしか見えない大ガマを避けて通った。
(ったく、世知辛い世の中だぜ……
おっ!あのレディ達、助けてくんねぇかな!)
女子高生の二人が近づいてくるのを見つけ期待をするが、大ガマを見るなり片方が悲鳴をあげた。
「蛙が死んでるー!!」
(いや!まだ死んでねぇよ!!?)
二人組は一目散に走って行き姿を消したのだった。
女子の罵声を久しく浴びていなかった大ガマはちょっぴり傷つき途方にくれた。
尚も人は通り掛かるも皆見ないふりをする者ばかり。
そのうち人通りも少なくなってきた。
(あー、参ったなぁ……こんなことなら来るんじゃなかったぜ。)
そう思った時にまた一つ人影が近づいてきた。
ふわふわとしたワンピースに華奢なミュール。
首には二重、三重のネックレス。
両の手には指輪を何個もつけネイルも目立っていた。
頭は明るい栗色の巻き髪を高く纏め、簪やコーム、ヘアピンがジャラジャラ付き、遅れ髪と一緒に耳の飾りも揺れていた。
(どーせ、お前も無視すんだろ……。)
その出で立ちを見て最初から期待などしなかった。
目を閉じて思案する事に集中した時、ツカツカと早足の足跡が聞こえ大ガマの前で止まった。
「え……この子まだ生きてる!!
お水!!あ……私、飲んじゃったんだ!
自動販売機は見当たらないし……あってもお店の売上げしか持ってなかったわ……どうしよう。」
おたおたと小さく独り言を言い、身なりにそぐわない子供っぽい言動に大ガマは目を丸くしていた。
「あっ!そうだ!ちょっと行った所に公園の池があったはず!よしっ!」
ふわりと浮かび大ガマの体は彼女の手のひらに収まった。
途端に走り出す彼女はミュールのせいで速度は出ないものの、暑さも加わって息を切らせていた。
大ガマは胸の辺りで抱き抱えられ、彼女の花の様な香りと微かな風を感じていた。