かえるのお姫様
□4days
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時間は閉店間際。
明日出荷予定の荷物の整理を終えた大やもりはバックヤードから店内に戻ってきた。
「なんだ。大ガマだって覗きしてるじゃないか。」
レジ横の大ガマを見つけ声をかける。
「暇だしなぁ。
……にしても、名無は可愛いよなぁ。客が皆笑顔だぜ?ありゃモテんだろ。」
「名無ちゃん可愛いよね。
でも、男の人と付き合ったことないって言ってた。」
「マジかよ?!」
「うん。バレンタインデーにチョコ貰った時に聞いたよ。」
「なんだ?バレンタインデーって。」
「女の子が好きな人にチョコレートをあげる日だよ。そういう風習があるんだって女郎蜘蛛も言ってた。」
「んで、なんでお前が名無からチョコ貰ったんだよ!聞き捨てならねぇな!」
「残念ながら義理だよ。
本命は手作りしたものらしいからね。」
「なぁんだ。じゃ、本命は俺がもらうからなぁ〜。」
「何言ってるの。名無ちゃんは生娘だよ。大ガマには勿体無いよ。」
「なんで勿体無いんだよ!!」
「だって大ガマ遊び人じゃん。」
「あぁ?!いまだにDなお前に言われたかないね!!」
「誰かれ構わずな奴よりはましだと思うね。」
そんな言い合いをしていると閉店時間はとうに過ぎ、通りからシャッターの閉まる音が聞こえた。
「おっ、名無が帰るのか?」
急いで店先に出るが名無の姿は無かった。
代わりにバッグを斜め掛にした見慣れない人物がシャッターを閉めていた。
大ガマは名無は帰ったとがっかりし、店に引き返そうとしたその時。
「名無ちゃん、お疲れ様。」
「あっ、やもりさんにおおがまさんお疲れ様です。」
はっと振り替えると先程のまとめ髪とふわりとした服装とは違い、髪はふわっとしていたが肩まで、白い丸襟のだぼっとしたシャツにジーンズをロールアップ、足元はぺたんこのブラウンの靴。
シャッターを閉めていた彼女はこちらに歩み寄る。
昼間のキラキラとした格好とはかけ離れ、飾り気のない身なりだったが、笑いかける顔は名無本人だった。