かえるのお姫様

□5days
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「今日、遅番だったんだね。」

「はい。品出しが多くて新商品に目移りもしちゃって閉店時間過ぎちゃいました。のろまでダメですねぇ。」

「そんなことないよ。」

「でも、最近はレジ締め完璧なのでまかされてるんですよ。」

「大丈夫?店長さんに押し付けられちゃってない?あの人最近あがるの早いから。」

「そうですかね……でも私一人の方が接客捗りますし気にしませんよ。」

「そっか。偉いね。」

「もっと誉めてくれてもいいんですよ〜。明日も頑張っちゃいます!」

ふふっと笑う名無の隣で黙りこくる大ガマ。

「どうしたの?大ガマ。」

「本当に名無なのか……」

「はい……
あっ、昼間の格好と今じゃわからないですよね。ウィッグとあの服装じゃ別人に見えますもんね。
あれ、うちのお店の商品なので身に付けなきゃいけない規則なんですよ。
今の私、やっぱり地味ですよねぇ。」

「いっいや、これはこれで可愛いぜ!!」

「おおがまさん焦ってますねぇ。」

「最初は僕も違う人かと思っちゃったよ。」

「もー。やもりさんまで!
でも、やっぱりこっちの方が楽ですね。」

「僕もこっちの方が好きだな。」

「あ!何しれっと告ってんだよ!」

「そっそうゆうつもりじゃ……。」

「やもりさんはいつもそうやってフォローしてくれるんですよ。
私、天狗になっちゃいます。」

「へぇ〜。」

「っ、名無ちゃんはこれから帰るんだよね?いつも暗くなって帰るから心配してるんだよ。」

「大丈夫ですよ。
地味な私なんかどうこうしょうって人そうそういないですから。」

「いや、それはどうだろ……」

大やもりは大ガマをちらりと見やった。

「なんだよ!」

「別に。」

「ここから駅まで近いし、電車から降りた先もお家まですぐなんですよ。」

「でもよ、女一人を夜道歩かせんのもなぁ……そうだ!俺が送ってやるよ!」

「え、悪いですよ!」

「へーきだって!」

「ちょっと大ガマ。」

「なんだよ!!」

大やもりは名無に詰め寄る大ガマの腕を力強く引っ張り耳打ちをした。

「もしかしなくても名無ちゃんに手出すつもりじゃないよね。」

「はぁ?!しょっぱなからんなことすっかよ!!」

「大ガマが名無ちゃんに変なことしたら今のお店辞めちゃうかもしれないだろ。許さないからね。」

「わかってるつーの!!」

「あの……」

耳打ちする二人を見て取り残された名無は声をかけた。

「何でもねぇよ!
やもりはレジ締めあるからって言われたんだ!送るぜ!」

「じゃあ、駅までで大丈夫です。よろしくお願いしますね。」

「名無ちゃん。本当に気をつけてね。」

腕を組みギロっと大ガマを制するつもりで睨みながら言う。

「はい。やもりさんまた明日ね。おやすみなさい。」

「うん、おやすみ。また明日ね。」

そう言って駅に向う二人を見えなくなるまで視線を外さない大やもりだった。
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