かえるのお姫様

□7days
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店に戻り昼過ぎにようやく名無のあがり時間になった。

大ガマは大やもりに名無と一緒だと言うと煩い為、出かけるとだけ伝え店を出た。

店から少し出たところで名無を待つ。

そのまま十数分が経って朝に見かけたいつもの姿の名無が大ガマを見つけて小走りで駆けてきた。

こちらを目掛けて走り寄る名無を見ると、まるで自分の事だけを考えている様に思え両腕を広げてしまいそうだった。

「おおがまさんお待たせしちゃってごめんなさい!」

「気にすんなよ!俺から言い出したことだしなぁ!」

「アクセサリーの返却と着替えで遅くなっちゃいました。これでも急いだんですけどね……のろまですみません。」

「いいって!これから出掛けんだし、そんな顔すんなよ!」

深い意味はないにしろ自分の為に急いでくれた事と、これから名無を独占して二人きりでいられる事が嬉しくて抱きしめたかったが何故か彼女にはできず、その代わりに頭をわしゃっと撫でた。

乱れた髪を耳にかけて笑う名無は可愛らしく、大ガマはまた胸がぎゅっとなり苦しくも思えたがそれすらも心地よかった。

「で、何処に探し物があるんだ?」

「ここから歩いて行ける場所なんですけど……本当に見つかるかは解らないんです。」

「まぁ、とりあえず行ってみようぜ!俺が必ず探し出してやるよ!」

「ありがとうございます!おおがまさんに一緒に来てもらえて良かったです!」

そう言われて張り切って歩き出す大ガマ。

暫くすると見た事のある場所に出た。
名無と初めて会った道。

ふと隣を歩く名無を見た。

(あん時はキラキラしてて蛙の俺なんかスルーしてくもんだと決めつけてたな……)

煌めく衣装のまま蛙の自分を抱き抱え、あたふたした名無を思い出し嬉しさと可笑しさが混ざりあって小さく笑った。

「おおがまさんどうしました?」

「いや、名無はホントおとぎ話のボロ着た姫みたいだなと思ってよ!」

「え……
おおがまさん酷いです。これでも自分なりにお洒落してるつもりなんですよ。」

「そういうつもりで言ったんじゃねぇよ?!」

「じゃあ、どういうつもりなんですか?」

「それは……
名無は何着てても可愛いって事だ!」

途端に頬を赤らめる名無だったが、まだ食い下がる。

「くっ苦し紛れですよね!
それじゃあ服の事はどうでも良く聞こえます。」

「ちげぇって!
まぁ……服はどうでもいいってのはある意味本音だけどな……。」

「やっぱり。」

「本当!何着ててもお前は可愛いって言いたかったんだよ!!」

誤解を解きたくて思わず大声になってしまい周囲からの視線が集まった。

「ちょっと!おおがまさん……あんまり大きな声で言わないで下さいよ。
たいした事ない私が可愛いなんて言われてたら恥ずかしいじゃないですか!」

名無の反応にこれはと思う大ガマは立て続けにまくし立てた。

「俺は本音しか言わないぜ?名無は姫みたいに可愛いぜ!!」

「もう!やめてくださいよ!」

「じゃあ許してくれるか?
本当の事言っただけなんだよプリンセス!!」

「あ〜もう許しますからあんまり大声で言わないで〜。……恥ずかしい。」

真っ赤にした顔を手で隠し俯きながらも名無は大ガマには勝てないなと笑った。

笑った名無を見て大ガマは内心ホッとした。

そして何故自分が今までの様に大胆な行動に出ないのかもこの時に理解したのだった。

名無に嫌われる事が恐ろしさに似た何かに思え、これからは言動に気をつけようなどと思う自分が少々気恥ずかしかったが背に腹は変えられない。

そんなことを思ったのは初めてに近かった。

(名無には嫌われたくねぇな。
そうか、大やもりもきっと同じなんだ……)

その後も二人は話しながら歩き続け、笑いが絶えなかった。

「もうすぐ着きますよ。」

「探し物見つかるといいなぁ!」

そう言い角を曲がった。

すると、飛び込んできた風景に大ガマは目を見張った。
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