かえるのお姫様

□9days
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翌日の名無の休憩時間。
大ガマはばつの悪そうな表情で手招きし、名無を店へ呼んだ。

名無は大ガマのそんな表情を不思議に思いながらも店に寄るのだった。

「名無!悪いっ!!」

「何がですか?」

店に入るやいなや平謝りの大ガマに名無はきょとんとした。

「お前に借りた上着、洗濯して返そうと思ってたんだけど駄目にしちまったんだ。」

「どういう事ですか?」

大ガマが恐る恐るさし出したボロボロの上着を目の当たりにして目が点になる名無。

「名無ちゃん……ごめんね。」

騒ぎを聞き付けて裏から大やもりも店内に謝りに顔をだした。

「やもりさんまで……」

「僕と大ガマで上着ボロボロにしちゃったんだ。本当にごめん。」

「名無!ごめんな!!」

必死に謝る二人に最初は驚いた名無だったが、想像していなかった上着の姿に思わず笑ってしまった。

「どんなお洗濯したらこんなになっちゃうんですか?」

ふふっと笑いまじりに二人に聞いた。

「大やもりの奴が上着引っ張るから取り返そうと思って引っ張り返したら袖がちぎれちまったんだよ。」

「なんで私の上着なんか取り合いになったんですか?」

「大ガマが名無ちゃんの上着で……「あー!なんでもないぜっ!!」

大ガマは大やもりを捕まえ耳打ちをした。

「名無に告げ口するんじゃねぇよ!」

「だって本当の事でしょ。」

続きを話しだしそうな大やもりの言葉を遮り、でたらめな言い訳をした。

「どっちが洗濯するかで引っ張り合って切れたんだよ!」

「……。」

無言の大やもりを横目に大ガマは続ける。

「ちぎれた上に洗濯乾燥したら縮んじまって……」

「僕もちゃんと洗濯表記見なかったんだ……」

「いいんですよ。
私も表記なんてわざわざ見ませんし、遅かれ早かれ着られなくなってましたよ。だから気にしないで下さい。」

ボロボロになった上着を前に笑う名無を見て申し訳なくなった大やもりは提案をした。

「お詫びと言ったらなんだけど、うちの店ので気に入ったのあったら持っていってよ。
全く同じものは無いと思うんだけど……。」

「そんな!悪いですよ!
この上着高かった訳じゃないし……お詫びだなんて。」

「じゃあ、プレゼントさせて。
気に入ったのあったらの話だけど。」

「あっ、お前ばっかりずりぃ!俺もなんかやるよ!」

「大ガマはお金持ってないでしょ。黙ってて。これなんかどうかな?」

大ガマをよそに遠慮する名無と服選びを始めた。

「出世払いだよ!名無!なんかもう一着持ってけよ!」

「そんな二着もなんていただけませんよ。」

「どうして俺の分は受けとれねぇんだよ!」

「ボロボロになったのは一着ですし……じゃあ……おおがまさんの分は違うことお願いしてもいいですか?」

「なんだ?!なんでもいいぜ!」

「あの……閉店後に私に付き合ってくれませんか?」

予想外の言葉に驚いた大ガマだったが、暫くして心踊ったのだった。

「あ、あぁ!いいぜ!じゃあ閉店後な!」

そう約束すると、大やもりに選んでもらった上着を抱えて名無は頭をさげ店に戻っていった。

「閉店後だってよ!なんだろなぁー!デートか?!」

「……知らないよ。本当に名無ちゃんには手は出さないでよね。」

大やもりにいつもの嫌みを言われるも上機嫌な大ガマはにこにことするのだった。
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