かえるのお姫様
□9days
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ひとしきり笑った大ガマは名無の姿を観察し、言葉少な目になってしまった。
「おおがまさんちゃんと後ろにいますかー?!」
「灯り照らしてんだからいるに決まってんだろ!」
「そうですよね……話が途切れちゃうと怖くて……」
「じゃ、ずっと俺の事呼んどけよ!」
「はい……おおがまさーんちゃんといますかー?」
「いるぜー!名無は探し物見つかったか〜?」
「まだでーす!おおがまさーんちゃんといますかー?」
「いるぜー。名無は好きなやついんのかー?」
「いまーす!おおがまさー「はぁ?!」
「えっ?!どうしました?」
「名無……お前、好きなやついんのか……」
「いますよー。家族にお友達も好きです!もちろんおおがまさんとやもりさんも入ってますよー!」
「なんだ……ありがとな。」
(友達括りかよ〜。)
自分でした質問に少し後悔をしたその時、
「あった!!」
名無は見つけた飾りをぎゅっと両手に抱えて出口に一目散。
飾り付け用のキラキラとしたモールやふわふわのゴーストの人形達と一緒に扉の前にいた大ガマに飛び込んだ。
「うわっ!」
突然腕にしがみつかれ大ガマは名無と飾りを抱えたまま後ろに倒れ込んでしまった。
「おい、大丈夫か?!」
そう声をかけた時に気づいた。
飾りのモールがあたり、チクチクとした感覚の中にふよんと柔らかいものが押し当てられている事を。
(この前抱きつかれた時は夢中で解んなかったけど結構あんのな……。
なんかやべぇな……やらかしちまいそうだ。)
駄目だ駄目だと頭の中でブザーが鳴り続けるも、どくどくと脈は早くなり名無にもう片方の手が動きそうになった。
「あー怖かった!
でも、おおがまさんがいてよかった。お化けにも会わなくて本当に良かった!ありがとうございました!」
(何言ってんだ!お前が今抱きついてんのがお化けなんだよ!!)
急に言われたお礼の言葉に驚きと笑いが込み上げ、邪な思いは吹き飛び大笑いをするのだった。
「なんで笑うんですか?」
「名無の怖がりが半端ないことが解ったからよ!」
「仕方ないじゃないですか。恥ずかしいですけど怖いのは怖いんです。
まだドキドキしちゃって……」
そう上目遣いをされ大ガマまでドキリとし、静まっていた熱が再び上がり始めた。
(こいつ解っててやってる訳じゃないよな?!他の奴にやったら危険だ!
つーか俺までドキドキしてきやがった!!)
頬を染める名無に我慢ならず飛びかかろうとしたその時、目の端にどき土器が見えた大ガマはそれを蹴飛ばすのだった。
(あいつの仕業かよ!!)
「怖がりなんて全く子供ですよね。」
平常に戻った二人。
名無は何喰わぬ顔で大ガマに話しかけた。
「あのなぁ。名無、お前ちょっとは危機感もてよー。隙だらけだぜ?」
「え?」
「この状況だって俺以外だったら危ないぜ?男は皆オオカミだとか母ちゃんに聞かなかったのか?」
「はい……まぁ。」
「俺だって例外じゃないかもしれないぜ?」
「そうですか?!
私、ずっと女子校で男の人のお友達はやもりさんとおおがまさんだけなので……」
「男は好きな奴じゃなくても色々できちまうから気を付けろよ!
おっ、俺は違うけどな!」
「そうですよね。おおがまさんはそんな事しませんよね。」
「あぁ……。」
(嘘ついちまった……しかも自分の首絞めちまうし……これで手出したら確実に幻滅される。)
大ガマは今まで自分のしていた事を無かったことにしたくなり、自分の放った言葉を後悔した。
「あー!もう!そうと解ればもう離れろよ!
これ以上くっついてるとお前を食ってやるぜぇ。」
そう名無に言い放ちニヤリと笑った。
「はい!そうですね!ごめんなさい!」
そう言うと名無は大ガマの腕からパッと手を放した。
(くぅー!そこは大ガマさんにならいいよってならねぇのか!!)
「ほらっ!立った立った!」
欲しかった言葉が貰えず、悔しい思いをした大ガマだったが立ち上がり、差し伸べた自分の手を取り笑い、立ち上がる名無にやはり触れたくなってしまいたくなった。
名無は床に散らばった飾りを拾い、大ガマはそれを手伝った。
飾りを拾いながら名無に近づき気付かれないようにそっと名無の髪に口付けをしたのだった。
(全然気づかねぇ……こりゃ帰り道は説教だな。)
恋人でもない名無だったが他の男に手を出されてはと思い自分の事を棚にあげ、そう思うのだった。