かえるのお姫様

□10days
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翌日、名無は昨日のお礼と言って出勤前にお菓子を持って大やもりの店に寄った。

「お礼なんていいのに。僕らが悪いんだから。」

「お喋りしたかったので口実ですよ。」

「名無は気が利くよなぁー!」

「大ガマは悪いと思わないの?
まったく……でもせっかくだからお茶入れてくるね。」

三人、店内の一角でお茶会をしていると突然、店に訪問者が現れたのだった。

「こんにちわー!お兄さんまた来たよー!
ねっ!かっこいいでしょ!?」

「本当だー!言ってた通りイケメン!」

昨日来た女子高生が友達数人と来店し大ガマを見るなり騒ぎだした。

「大ガマよろしく……。」

「あぁ?!」

そう言うと大やもりは大人しくした。

「お前らはまた来たのか?アドレスとかは持ってないぜ!」

「本当ですかー?」

「お兄さんが店長さんなんですか?」

「ちげーよ!あっちに座ってんのが店長!」

「えっ!そっくりですねー!店長さんもイケメンだー!」

そう言われ彼女達の視線から逃れるように名無の影に隠れる大やもり。

「やもりさん、イケメンだって言われてますよ。」

「そんな事言われても嬉しくないよ……ああいう子達は苦手。」

囲まれて話す大ガマ達とは対象的に大やもりと名無はこそこそと話しをした。

珍しく賑わう店に誘われていつの間にかもう一人客が現れていた。

少し大人な感じの女性は商品を決めてレジ打ちをお願いしたのだった。

大ガマはすかさずレジに入り会計を始めた。

「えー。会計は……
1,10,100万とんで862円で……」

「えっ?!」

「わりぃ!打ち間違えだ!!
でもまぁ、昔は一笑い千両って言われた俺に払って貰ってもいいんだぜ?」

大ガマはにっと笑って見せた。

「やだ〜お兄さん面白い!
スマイル100万円とか高過ぎ!
でも、お兄さんになら払ってもいいかな?」

「今日は美人に免じてサービスしとくぜ!次回からはたんまり用意してくれよっ!」

笑い話をしながら素早くレジ打ちをし直し接客を終えた。

その後商品を受け取った女性はまた来るねと言い店を後にした。

「お前らも何も買わねぇんならそろそろ帰れよ!」

そう言って騒ぐ女子高生達も解散させるのだった。

「はぁ〜やっと静かになったぜ……」

そう言って二人の元に戻った大ガマはお茶を一口飲んだ。

「大ガマ。あんまり人呼ばないでよ。」

「なんでだよ!繁盛してなんぼの商売だろ?!売上あがった分は給料上乗せしろよ〜。」

「えー。」

「大ガマさんモテモテでしたね!皆、目がハートでしたよ!」

ふふっと笑う名無を見て複雑な気持ちになった大ガマはカマをかけた。

「だろ?……けどよ。一人だけ虜にできないやつがいるんだよなぁ。」

「えっ!誰ですか?大ガマさんカッコいいのに……」

それを聞いて大やもりは吹き出した。

「くそっ!笑うんじゃねぇよ!」

「そうですよ!やもりさん!おおがまさん真剣なんですからっ!」

ちぐはぐな会話に笑いの止まらなくなる大やもりだった。

その後名無は出勤時間となり、ご馳走さまでしたと言って店を後にした。

「名無ちゃんの天然は筋金入りだね。」

「ったく、男知らな過ぎにも程があるぜ……危なっかしいしよ。」

「大ガマがそんな事言うとはね。その方が都合がいいんじゃない?僕が許さないけど。」

「名無には何でか無理に手が出せねぇんだよ!!
あー。俺って魅力ねぇのかなぁ〜。」

「僕も大ガマも名無ちゃんのストライクゾーンじゃないって事なんじゃない?」

「お前は良く平気でそういう事言えるな!悲しくねぇのかよ!!」

「別に。今日のお茶会だって楽しかったし、それで満足だよ。」

「あ"ー!お前とは話しになんねぇ!!」

そう言って頭を抱えるのだった。
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