かえるのお姫様

□13days
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あれから数日間、大ガマは眠れぬ夜を過ごすも自動的に朝はやって来るのだった。
朝の光に照らされ起こされる毎日。

(朝か……よくもまぁ毎日毎日光ってられるよな……俺の気もしらねぇで……名無と一緒だな。)

朝から痛む胸をだいて支度をするのも最近では慣れてきた。
背中を丸めて店舗へ降りると大やもりに遅いと小言を言われレジ横の椅子に座る。

(俺何やってんだろ……ここに居続ける意味なんてあんのかな……)

繰り返される毎日になる事を想像したがその中に名無は居ない。
その白黒の世界を思うと耐えきれず、忘れようとしている名無をついつい足してしまう。
すると、一瞬にして色彩に溢れた世界が広がり輝き出すのだった。

そんな事を思いながら向かいの店を覗いてみるも女店長と名無の同僚の姿しかなく、今日は名無は休みの様だった。

(今日は名無は休みか……あいつ休みの日は何してんだろうな……雨じゃないから部屋には居ないんだろうな……)

前に交わした言葉の中から拾い集めたもので思いを巡らせた。

(やっぱ待ち合わせに向けて買い物にでも出掛けてんのかな……俺の知らない顔して買い物して……あいつにも俺には見せなかった顔して……これから先の色んな名無を見ていくのはあいつなのか……)

要らない想像までして更に苦しさは増した。

(俺はあいつより名無の事知ってんだ……
可愛くてキラキラしてるものとか食べ物が好きな事とか、お化けが苦手とか……
あんなに可愛いのに蛙が触れたり、店長のいびりにも動じないし、怖いおっさんも相手にできるほど肝が据わってる所は誰も知らないだろ……
頑張って俺にたてつく事もあったけど最後は敵わないって笑う照れ笑いが最高に可愛いんだ……それが見たくて意地悪したのがいけなかったのか?
それに柔らかくて暖かい……もっと側にいたかったなぁ……)

大ガマは半分諦めようとするも、どうしても名無を切り離せずにもがくばかりだった。

「名無……会いてぇよ……」

消え入りそうな小さな声でぽつりと呟くだけで諦めは掻き消され振り出しに戻り、地獄にも似た無限のループは大ガマを離そうとはしてくれなかった。
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