かえるのお姫様
□15days
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「名無ちゃん、今日はお休みみたいだね。」
「……あいつ大丈夫かなぁ。」
遅番出勤の時間を過ぎても名無の姿を現さないと大やもりは大ガマにぼやいた。
「今はきっと落ち込んでいるだろうけど、名無ちゃんは真面目だから遅くとも明後日位には顔出すんじゃないかな……」
「あぁ……そうだよな。
このままって訳じゃねぇよな……」
二人は理由も無く名無が店に出勤してくるであろう日にちを決めるも翌日、またその翌日になっても名無は現れなかった。
二人は頭に名無は店を辞めたのではないかと浮かぶものの口には出さず、あえて名無の話をせずに一日一日を過ごすのだった。
そうしているうちに四日以上も経ちさすがに我慢のできなくなった大ガマは名無の話題をもちだすのだった。
「なぁ、今日で名無が休んでんのも5日は過ぎたぜ?!」
「うん……そうだね。やっぱり名無ちゃんお店辞めちゃったのかな……」
「そっ、そんなの決まった訳じゃねぇだろ?!」
「けど、あんな事あってからの欠勤じゃそうかなって思うよね……」
「そんな事になったらあの野郎マジでムカつく!許せねぇぜ!!」
「うん。マジでムカつくね……」
二人の大妖怪の殺気が立ち込め店内は猫の子一匹すら入れない状況になるのだった。
「けど、その前に聞いてみなくちゃ解らねぇ!!」
「聞くって?」
「名無の事をだよ!」
「誰に?」
「前の店のやつにだよ!」
「店長さん?」
「いや、店長はもう帰っただろ?
今いる名無の仕事仲間に聞けばいいだろ?
大やもり、行って聞いてこいよ。」
「え、なんで僕なの?名無ちゃんとしか話した事ないし嫌だよ。」
「俺だって名無に他の女と喋らねぇって啖呵切ったし無理だ。」
「でも、そう言ってもフラれちゃったんでしょ?意味無いじゃないか。」
「フラれたって関係ねぇ!
よく思い出したら名無のやつ、今は考えらんねぇって言ったんだよ!考えられる日が来るかもしれないだろ?!
その時の為に少しでもクリーンになっていてぇんだよ!」
「はぁ……大ガマってどうしてそんなにポジティブなの?羨ましいよ。
けど、そんな事で今までのが全部、洗い流せるとは思えないけどね。」
「ここ数日名無が居なくて気づいたんだ。こんな俺だけど、やっぱあいつの側に居たいって。」
「それは僕も同じだよ。ここにいたってなんの楽しみも無くなっちゃうからね。」
「なら、大やもり頼む。」
「それとこれとは別だよ。大ガマが言い出したんだから大ガマが聞いてきなよ。」
「俺の話し聞いてたか?!」
「聞いてたけど、そんな事したところで根本はたいして変わらないよ。僕は何言われても行かないからね。」
「あーもう。わかったよ!
お前の名無に対する気持ちはそんな程度って事だな!
しかたねぇ。俺が行く事にするけど名無には言うなよ!!」
「なんとでも言ってよ。」
そう話を済ませ大ガマは向かいの店の店員に話を聞いて再び店に走って戻ってきた。
「おいっ!大やもり!!」
「どうしたの?!」
「名無のやつ辞めてねぇって!!風邪で熱出して寝てるみてぇだ!」
「なんだぁ……そっか良かった……
あっ、良くはないか。」
「んじゃ、出掛けっから!」
「え、何処に?」
「名無の家に決まってんだろ?」
「訪ねていくの?!」
「見舞いだよ!もう5日も会ってねぇし、名無がどうしてるか気になるんだよ。」
「でも、女の子の家に押し掛けるのってどうなの?しかもフラれた男が……しつこいと思わない?」
「……うっ。
けどよ、仮病かもしれないだろ……気になるんだよ。もっと嫌われるかもしれねぇけど、放っとけねぇ。」
そう言って店を出た。
大やもりには何かお見舞いに手土産をと言われて店で扱うブランケットを持たされ、名無がいつも飲んでいたスムージーを途中で買った。
いつも飲んでいた物が緑色をしていた事しか解らず店員に売れ筋順に2つくれと頼み、それを手に名無の部屋へと向かうのだった。