かえるのお姫様

□17days
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季節は秋を通り過ぎ冬の入り口。
気温はだんだん低くなり朝の支度も辛くなってきた。

「寒ぃ〜。冬眠しちまいそうだ。
なぁ、冬の間は休業しねぇか?」

「またそうやってサボる。
いいけど、お店休みにしたら名無ちゃんも気を使って寄ってくれなくなっちゃうよ?」

「……それは困る。」

一山を越えて名無とは以前の穏やかな日々を送る大ガマはそれを手放したくなかった。

「そうでしょ?
だったら早く支度して降りてきてよ。エアコンもつけて暖かくなってるから。」

「へーい。」

本日は今シーズン初の最低気温で日も差さず曇天。

大ガマはカウンター横で座り、ヒーターで暖まった。

向かいの店が開き、名無が見えると暖かさが増した気がして何となくほっとするのだった。

寒さと平日のせいか互いの店のお客も数が少なく、名無と目が合うと手を振り向こうからも手を振り返してくれぼーっと名無の終業時間まで待つ。

毎日、何か少しでも言葉を交わしたくて仕方なくなってウズウズとしていた。


朝から出勤の名無は終わり時間になり普通に店を出てくると想像していたが今回は少し違った。

普段着に着替えたもこもことした冬服の名無は何やら店長から大きな買い物袋を渡されメモ書きについて説明を受け、店から出てきたのだった。

そして、その大きな袋を持って駅とは逆の道へ進んでいき何やら用を足す様子に見えた。

何をしに行くのか気になった大ガマはいつもの様に大やもりに声をかけて、上着を一枚着ると名無の後を追い、声をかけた。

「名無!」

「おおがまさん!お疲れ様です。」

「お疲れ!今日はもう仕事終わりだろ?どこか行くのか?」

「今日は残業って言ったらいいんでしょうか?
クリスマス用の店の装飾を今年から新しくしたいからって買い出し頼まれたんですよ。」

「またこんな寒い中、店長も名無一人に任せるんじゃねぇよな。」
(今度はクリスマスか……クリスマスくらいは知ってるぜ!)

「でも、クリスマスの飾り選ぶの楽しいじゃないですか。なので私は気にしてませんよ。」

「ったく。これだから店長にいいように使われちまうんだぜ?
わかった!俺も買い出し付き合ってやるよ!」

「嬉しいですけど、時間かかっちゃいますし……」

「大丈夫だよ!そのでかい袋一杯になったら重くて大変だろ?俺が持ってやるから。」

「そんなの悪いです!」

「お前の災難は俺が受けてやるって言ったろ?気にすんなよ!」

名無が遠慮するのは予想範囲内。大ガマは強引に話を進め買い出しについていく事にしたのだった。
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