かえるのお姫様

□18days
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対峙する二組はだんだんと近づき、もう数メートルの距離。

名無は怯えているのか大ガマの上着をぎゅっと掴み、足が思うように進まず、ほぼ大ガマが片手で抱き抱える状態になっていた。

そのままおとなしく隣を通り過ぎようとしていたその時、前から来る男が鬱ぎがちの名無に気づき、あっと声を上げて笑ったのを大ガマは黙って見過ごす事ができなくなってしまった。

「オイ、オマエ!俺の女にまだなんか用でもあんのか?!」

振り向き様に声をかけると男はしらばっくれた様な口調で飄々と笑い、連れていた女まで悪態をついてきた。

「ずいぶん下品な女連れてんな!オマエにぴったりだぜ?
そこの女!そいつは俺の女に手出そうとしたんだ!早めにみかぎって乗り換えるのをオススメするぜ!」

その言葉を聞いて、どういうことかと大声で男を罵り男女は道端で喧嘩が始まった。

「あーぁ、みっともねぇな!
まぁ、オマエにはこんな当たりくじは勿体なかったって事だな!」

そう言って名無の頭をくしゃくしゃと撫でて見せた。

「オマエみたいな奴は一生ハズレくじでも引いてろよ!
行くぜ!名無!!」

そう言ってその場を足早に離れるのだった。

後ろからは喧嘩の声が引き続き響き、大ガマは男を一発殴ってやりたい気持ちをぐっと押さえるのが精一杯で名無を引きずる様に引っ張り無言で歩いた。

暫く歩き空気の冷たさで頭も冷され冷静になった時、隣の名無がずっと無言でうつ向き歩いていることにようやく気づいた。

「大丈夫か?」

そう言うも名無は一言も言葉を発しなかった。
怒っていると思い、何の不満があったのかを思い返すと色々とあり過ぎて大ガマは青ざめた。

「ごめん!名無!
本当はただ通り過ぎようと思ったんだよ!けど、あいつが笑うから……余計な事して悪ぃ!!
それともあれか?!俺が名無の彼氏面したから怒ってんのか?!
もう、そんな事言わねぇから!
本当、ごめんなっ!」

そう話しかけると名無は大ガマを見つめた。
その目にはなみなみと涙が溜まりあっと言う間に零れ落ちた。

「ごめん。名無の災難は俺が受けるとか言っといて増やしちまったよな……口ばっかでやっぱ駄目だな……俺。」

大ガマは胸がキリキリと痛み名無から目を逸らすと、涙で言葉にならない名無から絞り出すように言葉が溢れ出るのだった。
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