かえるのお姫様
□2days
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「あった!池!後もう少しだよ!」
ここへ来るまで大ガマへ何度も呼び掛けながらやっと辿り着いたのはボートも浮かぶ大きな池。
その池の桟橋の影へそっと大ガマを下ろしパシャパシャと水をかけた。
「お願い!間に合って……私が抱っこしてたから暑かったのかなぁ。」
微動だにしない大ガマを心配し水をかけたり手で仰いだり、ネイルが当たらないようにそっと頭を人差し指で撫でたりした。
予想外の出来事に驚いた大ガマは動けないでいたがはっとし、ゲコっと鳴いて見せた。
「あー!よかった!元気になった?心配しちゃったよ〜。」
そう言ってまた一撫でしながらにこりと笑いかけた。
彼女を見る大ガマは今まで大勢の女達が見せた笑顔とは何かが違い釘付けになった。
「君は青いお化粧してるんだ……素敵だね!
あっそうだ!銀行行かなきゃいけないんだ!
うわぁ!ギリギリだー!」
彼女はシャラリと腕に付けた時計を見て声をあげた。
「店長に怒られちゃうからじゃあね!元気でね!」
そう言ってまた笑顔を見せ去っていった。
暫くその場で休み、時刻は夕方。元に戻った大ガマは先程の一連を思い返していた。
「なんだったんだ……さっきの。」
不思議な感覚が頭から離れず、さっき彼女が座っていた場所を見るとキラリと光るものが。
拾い上げると彼女が頭に付けていたヘアピンだった。
「あいつの髪飾りか。
ここら辺ぶらついてたらまた会えっかなぁ……」
そう思いヘアピンの裏を見るとTiaraの文字が刻印されていた。
「まぁ、とりあえず日も暮れたし、大やもりんとこ行くか。」
ヘアピンをポケットへしまい、再び地図を持ち歩き始めた。
「マジで場所わかんねぇな。頼むぜ女郎蜘蛛ー!
もうここは誰かに聞くしかねぇか。」
そう思い見渡すと見覚えのある人影。昼間逃げて行った女子高生の二人組が喋りながら歩いていた。
「あいつらか……他に聞ける奴見当たらねぇし、しかたねぇな。」
大ガマは二人に近づき声をかけた。
「ちょっと聞きてぇんだが、ここへ行くには何処行ったらいいんだ?」
「えっ?」
大ガマを見た二人は顔を赤らめ淑やかに話しはじめ別人の様だった。
「この地図じゃちょっと……」
「ねぇ、此処にHouseLizardって書いてあるよ!
お兄さんここのお店に行きたいんですかぁ?」
「あぁ、そうだ。」
「このお店ならそこの道をまっすぐ行って、二本目の通りの左側にありますよ〜。」
「そうか!サンキューな!」
「いいえ〜!知ってるお店で良かったですぅ。」
にこにことする二人組だが先程の彼女とはやはり違った。
「ほんとありがとな!じゃあな!」
そう言って走り出す大ガマに向けて一人が叫んだ。
「お兄さん!メールのアドレス交換してください!!」
「あぁ?なんだそりゃ!んなのもってねーよ!」
そう叫ぶと二人を置き去りにし、店へと急ぐのだった。