かえるのお姫様
□4days
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「お疲れさん!」
「あっ、おおがまさんお疲れ様です。」
「あの女店長やっと帰ったな!いつもあんな機嫌悪いのか?」
「見てたんですか?」
「あぁ、うちの店ヒマだからなぁ!」
「そうですか……私いつも要領悪くて店長さんに注意されちゃうんですよ。見られていたなんてお恥ずかしいです。」
照れながら笑う名無。
「あのばぁちゃんも喜んでたし、良かったと俺は思うぜ!何が気にくわなかったんだ?」
「あっ、あの時はですね、接客に時間を取り過ぎていて回転率が悪いって言われました。」
「回転率?なんだそりゃ!
自分だってずっと1人についてたじゃねぇか!」
「そうなんですけど、店長さんのついていたお客様の場合はお薦めした商品を沢山お買い上げされていたのでそれはそれでいいみたいなんです。
あのお婆ちゃんは一つだけでしたから店長さんから注意受けちゃったんですよ。」
「ふーん。俺にはわかんねぇな。
客は好きなモン買って帰りゃそれでいいだろ。」
「私もそう思います。
多少お薦めもしますけど、やっぱりその人が本当に気に入って選んだものをお買い上げして頂きたいです。
あのお婆ちゃん、近所にヘアネット売ってるお店がないって足運んでうちまで来てくれたので、また来てほしいなって思いますね。」
「そっか!でもまたあいつに怒られちまうなぁ!」
「はい……でも店長さんもお店が潰れないよう売り上げ気にしなくちゃいけないの解りますし、しかたないんです。私もまだまだですね。
お婆ちゃんについては私が注意受ければいいので、それでいいです。」
「そん時はまた店長に叱られてる所こっちから見ててやるよ〜」
「え?!恥ずかしいからもう見ないでくださいよ〜」
そう言って笑い合った。
「閉店時間まで後少しですね!頑張りましょう!」
「おう!」
その後、お互いに店内に戻って行った。
店内に戻った名無はレジのカウンターで日誌を書いていた。
それをこちらの店のレジ横から眺める大ガマは名無との会話を思い出し、胸がふわりと暖かくなったのだった。
そうこうしているうちに向こうの店には大きな人影が近づいていた。
どっしりとした印象の男。
その両腕にはタトゥーが処狭しと彫られ、スキンヘッドの頭にも龍が二頭刻まれていた。
その客に気づいた名無は日誌を放り出し近づき横に並んだ。
幅は名無の二倍、背丈も彼女との差は頭一つ半はあるかという大男だ。
「マジかよ……あいつ大丈夫か?」
思わず言葉が漏れ、大ガマは速やかに店の入口近くに行き、いざという時のために臨戦態勢の構えでいた。