かえるのお姫様
□5days
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いつもの姿とは違い違和感があるのは否めなかったが、大ガマは名無と二人きりの散歩の様に感じ心を踊らせていた。
「いつもその格好なのか?」
「はい。そうですよ。
お店での格好の方が好みなんですね!キラキラしてておおがまさんらしい。」
「いや、そう言う訳じゃねぇけど!」
「無理しなくていいんですよ。
私もああいう格好に憧れてあのお店に入ったんです。
町に一歩出たら自分に自信なくて仕事じゃなかったらあの格好はできないので。」
「そうか?似合ってるぜ?!普段もあれでいいんじゃねぇか?」
「いえ!なんだか気恥ずかしくて駄目なんです。なんでかな……
その点、あのお店に居るとティアラなんかつけたって仕事だから可笑しくないし、好きなアクセサリー沢山つけられて、まるでお姫様になったみたいで凄く楽しいんですよ。
でも、白馬に乗った王子様は迎えに来てくれませんけどね。」
「そういうのは案外近くに居たりするもんだぜ?」
「本当ですか?!じゃあ、王子様見つけたらすかさず教えて下さいね!
やもりさんにも言っておいて下さい。」
大ガマは微妙なアピールをしたつもりだったが肩透かしを食らったのだった。
「そういや名無はやもりさんやもりさんって、なんであんな気に掛けてやってんだ?」
「そんな風に見えましたか?」
「かなり仲良さそうに見えるぜ?!」
(くっそー!!)
「そうですね……。
実は私、あんまり人と話すのが得意じゃなくて。これじゃ駄目だって今のお店に入ったのも理由の一つなんです。荒治療ってやつですね。」
「へぇ!そんな風には見えねぇな!」
「そうですか!それじゃあ修行の成果でてますね!」
「バッチリだな!」
「なので、やもりさん見てたらなんだか自分を見てるようで……勝手ですが、ほっとけなくて。
それにやもりさん凄く優しいし、おっとりしてて癒し系ですよね。」
「アイツがかぁー?!
俺には随分なこと言うぜ?!」
「そうなんですか?
私にはいつも優しいですよ。私、お店でいつも怒られてるので癒されに寄っちゃうんです。
おおがまさんとは本当に仲良いんですね!」
「どーなんだろーなぁ。」
(大やもりに癒されてるとか気に食わねぇなぁ。)
「気にせず本音が言えるなんて仲良い証拠じゃないですか。羨ましい。
私はそんな相手居ませんから。実家にいる猫ちゃんくらいです。」
「じゃあ、俺になんでも言えよ!俺も基本は本音しか言わねぇからな!」
「はい!私もそうしますね。」
名無がにこりとし頭をさげた時、キラリとするものに目がいった。
「あっ、その髪止め。」
「あっこれ、おおがまさんが届けてくれたピンですよ。
これ着けてると同じの欲しいって良く言って貰えるので、可愛くてお気に入りで毎回貸し出し申請が面倒なので今日思いきって買っちゃったんです。
うちの人気商品ですよ!」
「そうか!良く似合ってるぜ!」
「あの時は本当にありがとうございました。」
プレゼントした訳ではなかったが、自分の手にしていた物が名無に気に入られ、ずっと着けていてくれることが嬉しくて胸がむず痒くなった。
ほかほかとする胸が心地よく名無の隣にずっと居たくなって大ガマは歩く歩幅を小さくし、少しでも駅に着くのを遅くしようと気付かれないよう悪足掻きをした。
だが、大ガマの作戦も虚しく駅まではあっという間だった。
「今日は送ってもらっちゃってありがとうございました。」
「なんだったら毎回送ってやるよ!姫!」
「姫なんてそんな大声で恥ずかしいですよ!こんな一般人な姫なんていませんし!」
「そっか!悪りぃな!本当の事言ったまでだ!」
けらけらと笑う大ガマに恥ずかしがりながら言い返す名無。
「それじゃあまた明日お店で。おおがまさんお休みなさい。」
「あぁ、お休み。気をつけてな!」
そう言って手を振る名無を見送った。
帰り際は不思議と最初に感じていた身なりの違和感はなくなっていた。
(恥ずかしがってる名無可愛かったなぁ……あ〜帰したくなかったぁ〜。
いっそ家まで送ればよかったなぁ。
あ、でも電車賃持ってねぇわ。)
そんな事を思いながら大ガマも家路につくのだった。