かえるのお姫様
□7days
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「ここなんですけど……」
そう言った名無のうしろには見覚えのある池が広がっていた。
「へぇ〜……」
そこは間違いなく大ガマが名無に連れて来られた池だった。
なんだか少し胸がざわつく大ガマは名無に問いかけた。
「……で、何探すんだ?また落とし物か?」
「いえ、物じゃなくて……その……
カエルさんを探してほしいんです!」
「はぁ?!何でまた蛙なんだよ!」
「実は数日前に道で弱ってるカエルさんをここの池に放したんですけど、その後にニュースでここの池で外来種の駆除をしてるって知って、いてもたってもいられなくて。」
「がいらいしゅ?」
「あっ、外国から来た生き物の事ですよ。日本で昔からいる生物より強いみたいなので外来種は駆除対象みたいなんです。
あの子、目の上から背中にかけて青い模様があって絶対ペットショップの子に違いないんです!
このままだと処分されちゃうから探してほしいんです!」
(うわ……それ間違いなく俺だ……)
そう思った大ガマは名無に諦めるよう諭すのだった。
「でも、蛙なんてこんな広い池にじっとしてる訳でもねぇし難しいんじゃねぇか?」
「難しいと思いますけど、私がここに連れて来ちゃったせいで駆除されちゃうと思うと……」
「そいつも案外日本の蛙なんじゃねぇ?」
「それはないです!
私、田舎育ちなので沢山カエルさん見てきましたけど、あんな模様は初めて見ましたから!」
「そうかぁ……」
「やっぱり探さなきゃ。」
そう言って名無は桟橋に近づくと屈んで探し始めるのだった。
(まさか探してんのが俺だとは思わないよな……あ〜。どうすっかなぁ。)
名無のうしろで頭を抱える大ガマは探している様子をじっと見た。
水際をくまなく探し、手にはいつの間にか熱帯魚用の網が握られていた。
(あんなんで俺が捕まるかよ!!)
笑い出しそうになったが、真剣な名無をまた怒らせかねないので我慢をした。
そして、見つかるはずのない蛙の自分を探すふりをして名無の後についてぐるりと池の周りを歩くのだった。
「やっぱり見つかりませんね……他のカエルさんすら見当たらないし。」
「そうだなぁ〜もう捕まっちまったのかもなぁ。」
「そんな事になってたらどうしよう……私のせいだ。」
名無は悲しそうに池の真ん中を見つめるのだった。
(こんな事なら店の青いペン持ってくりゃよかったなー。そこら辺のやつ捕まえて俺に成り代わらせたのに!)
そんな大ガマ大将の気を察してか、ますます池の蛙は出てくる事はなかった。
しゅんとする名無を見ていられなくなった大ガマは声をかけた。
「なぁ、あそこのボート乗って探してみようぜ?
こっちからじゃ見えねぇとこもあるかもしれないだろ?」
居もしない蛙を探しているのに滑稽だとも思ったが落ち込む名無を見ると提案せずにはいられなかった。
そして、二人はボートを一艘借り乗り込んだ。