かえるのお姫様

□8days
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「帰ったぜ〜。」

「おかえり。
こんな時間まで帰って来ないからもう自分の屋敷に帰ったのかと思ったんだけどな。」

「出かけるって言っただろ!
なぁなぁ!それより洗濯ってどうやるんだ?!」

「何?急に。」

「これ名無のなんだけど借りたから洗ってやりたいんだよ!」

「え……名無ちゃんと一緒だったの?」

「あっ、しまった……」

「変な事しなかったよね?
なんで大ガマが名無ちゃんの上着持ってるの?」

「別に変な事なんてしてねぇよ!
上着は寒そうだからって名無が貸してくれたんだよ!」

「ふーん。」

「で、洗濯のやり方は?」

「僕は近所のコインランドリー行っちゃうよ。
あ、自動で洗濯やってくれる所ね。
干すのめんどくさいし。」

「すげー!そんなとこあんのか!明日行ってくる!」

そう言うと上着を持ったまま寝床に転がる大ガマ。
ぎゅっと握りしめ名無を思った。

「もー。本当にそういうのやめてよ。
変態。」

「いいだろー。どうせ明日洗濯するんだし。」

大やもりを横目に上着にすりついた。

「名無ちゃんが汚されてる気がする。」

大やもりは寝ている大ガマに近づき名無の上着をつかんで取り上げようとした。

「なんだよ!これは俺が借りたんだ!触るんじゃねぇよ!」

大ガマは勢いよく引っ張り返したが大やもりは離さず、大ガマの寝転ぶベッドへダイブしてしまった。

「おい!降りろよ!ヤローと寝る趣味はねぇぜ!」

「僕だって大ガマとベッドインなんかしたくないよ。でも降りるのはこの上着を君から奪ってからだよ。」

「はぁ?!お前になんか取られてたまるかよ!」

「今日だって何で名無ちゃんといたの?!名無ちゃんにあんまり関わらないでよ!」

「なんでお前の言う事きかなきゃなんねぇんだよ!やっぱ名無の事が好きなんじゃねぇか!」

「そうだよ!好きだよ!名無ちゃんを独り占めしたいとは思わないけど、あのお店から居なくなって欲しくないから言ってるんだ!」

「なんだそりゃ!回りくどいな!もっと男らしく堂々と言ってみろよ!」

「これが僕の本心なんだから大ガマにどうこう言われる筋合いなんてないよ!」

ゲコゲコみゃあみゃあと続く喧嘩の最中に名無の上着は引っ張られ、ふいにビリッと聞こえた音に怒鳴り声は止んだ。

二人の男の腕力に耐えかねて薄い夏物の上着の袖は易々とちぎれてしまった。
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