さよならの歌は歌わない
□第1話
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――春
桜並木を歩く真新しい制服を着た少年少女達。
彼等は芸能学校早乙女学園への入学を許された生徒達である。
競争率200倍を勝ち取った彼等の目は希望と期待に満ち溢れていた。
………―――。
始まった入学式では学園長シャイニング早乙女が華麗なダンスを交えながら挨拶を行い、緊張気味の生徒達を和ませる。
そして式は次の項目へと移る。
「続きまして、新入生の挨拶。新入生代表、楠本美音」
『はい』
凛とした、よく響く声が聞こえるとすぐに壇上に一人の人物が上がった。
その姿を見た人々は少なからずざわめく。
セミロングのミルクティーブラウンの髪、ダークブラウンの澄んだ瞳、鼻も口も人形の如く整っており、美男美女が揃うこの学園でも一際美しい容姿をした少女だった。
壇上に上がった美音は一礼をした後、懐から紙を取り出して読みはじめる。
『あたたかな春の訪れとともに…』
淡々と読み上げると、彼女はもう一度礼をして、壇上を後にした。
その間、美音はニコリともせず、かと言って恥ずかしがるそぶりも見せず自分の席へと戻って行った。
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