さよならの歌は歌わない

□第4話
1ページ/8ページ






『ぅ…』








鈍い痛みを感じながら美音は目を覚ました。
同時に消毒液の独特な臭いが鼻を突く。









「美音、大丈夫?」








目覚めると自分はベッドに寝かされていて、隣には心配そうな功太と龍也の姿があった。








「美音、わかるか?」


『私…どうしたの?』


「階段の踊り場で倒れてたんだよ、日向先生が見つけて此処まで運んでくれたんだ」


「目が覚めましタカー?」








シャーッとカーテンを開けて入ってきたのは早乙女だった。
彼は白衣を羽織っており、パッと見は医者らしい姿である。









「え…学園長なんで?」


「ハッハッハー!Meは保険医も牽引してるのYOー」


「学園長が保険医…?」


「しゃーねぇだろ、オッサンがやるって聞かねぇから緋沙子さんも折れたんだ」


「美音サーン、Youは今左足、両肩、頭に打撲が見られマース。一週間は絶対安静デース」


『…はい』







美音が答えると早乙女は頷いて保険室を後にした。
早乙女を見送ると龍也は再び美音に向きやる。








「お前が階段を踏み外すわけがねぇ。…何があった?」


「美音…」


『………』







美音は女生徒に突き飛ばされたことを正直話した。
話を聞き終えた二人は顔を歪めていた。








「先生、さすがにこれは…」


「ああ、下手すりゃ殺人だ。無視するわけにゃいかん」








龍也は眉間にシワを寄せながら美音の頭を撫でる。
その表情には僅かに怒りが垣間見えた。








「心辺りは…うちのクラスの女生徒だったな?」


『えーと…確かいつも五人くらいのグループでいる人達』


「アイツらか…確か成績がギリギリで、次の課題赤点だったら退学になる連中だったな」


「八つ当たり…ですね」


「…馬鹿なことするもんだ」








呆れた様子で呟くと、龍也は立ち上がった。








「お前の荷物持ってくっから、此処でしばらく待ってろ。久世、付いてやっててくれ」


「はい」


『ありがと…龍さん』


「コラ、学校では先生だぞ」








そう言いながらも美音を見つめる目は優しい。
彼女への慈愛が溢れる眼差しであった。





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ