らしくっ!
□第二話
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(へへっ、今のうちにあんなトコやこんなトコ触っちゃおーぜ!)
(な、何言ってんの!ダメに決まってるだろ!!)
(はー、出た出た!ほんとは自分だって触りたくて触りたくて仕方ねーくせに。シコ松のくせになーに紳士ぶってんだか。いいの!?おっぱい揉み放題だよ!?言っとくけど俺らにおっぱいが生えてこない限り、こんなチャンス二度とねーから!!)
(おっぱいおっぱい!!おっぱいいっぱーい!!)
(バッカ、十四松うるせー!夢子が起きるだろ!?)
(フッ……眠り姫を目覚めさせるには王子のキスしかない、か)
(黙れクソ松!!!その口縫うぞコラァ!!!)
(も〜ケンカはやめてよ。おっぱいもいいんだけどさ、ヘソのシワでしょ。えへへ、ちょっとだけ……)
何だろう。
頭の奥で小さく鳴っていたガチャガチャとした騒音はやがて賑やかさを増していき、終いには私を囲んでいた。
「っ、ん……」
そろりと鉛のように重い上瞼を、持ち上げていく。視界がぼんやりとして、霞む。
「あっ、やべ」
誰かの、しまったとでも言いたげな声。やがて目が慣れてくると共に、緩やかに揺れていた意識もしっかりと定まってきた。
背中を占める固い感触が、どうやら私は仰向けに寝かされているらしいと教えてくれる。
「っ、!?」
視界を埋め尽くすのは私を覗き込んでいる六人の男の、顔。全員同じ、顔。
そしてその内の一人が私の服の裾をつまみ上げ、何やらめくろうとしているとこだった。幸い胸元まで見えてはいない。おヘソがちらり、程度。
そこからは勝手に、体が動いてた。
バッと飛び起きると未だ私の服を摘んで固まったままのピンクのパーカーに、エルボーをくらわす。
「フガッ」と仰け反るピンクをそのまま押し倒し、馬乗りになって胸ぐらを両手で掴んで揺さぶった。
「何してくれとんじゃクソバカおそ松!!そんなに殺されたいんかボケ!アァ!?」
「ちょ、ちょ、違っ、僕はトド松、っ……」
「へ?」
ガクンガクンと激しく動かしていた手を止め、私の下になっている男の顔に集中してみれば確かに少しばかりおそ松とはパーツが違う。
黒目が大きくてキラキラしているし、口元もふにゃりとしていて可愛さを前面に押し出している。ただ、今はげんなりして青ざめているけれど。
そうか。トド松までもが、おそ松化から抜け出しているらしい。
「でも女の子に乗られるって、悪くない、かも……」
「オイずるいぞトッティー!」
トッティなんてあだ名まであるのかと思いながら、ずるいずるいと喚いている男に視線を移した。
赤色パーカー。間違いない、今度こそおそ松だ。とりあえずグーで殴っておいた。
「っ、なんで俺殴られたの!?」
「知らない。天のお告げよ」
「何なのお前!?神様の使いか何かなの!?その割には全っ然可愛くねーんだけど!天使ならもっと超絶美人でしょ〜」
もう一発パンチをお見舞いしておいた。