らしくっ!
□第一話
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六つ子と私は年齢が同じで、中学までずっと一緒に過ごしてきた。
けれど父の転勤を機に、彼らとの関係もそこで終わった。簡単には会えない遠い場所へと、引っ越すことになったのだ。
私はそれで良かった。
ただただ離れたかったから。好都合だったんだ。
けども、再び父が元いた事業所へと戻ることになり帰ってきた。
この町へ。
あいつらが暮らす、町へ。
「きゃー松代ちゃああぁん!!元気してたの!?ねえどうなの!?そこんとこどうなの!?」
「和代ちゃん……!!嘘みたいだわ、またこんな日が来るなんて……!!」
うちを出れば真向かいに、松野家。
すぐ着く。考える間もなく。ほんとやめて欲しい。
訪ねていけば、すぐに六つ子の母である松代さんが顔を出して迎えてくれた。
私の母、和代とは以前ここに住んでいた頃からの付き合いで、馬が合うのか仲良しである。
二人は約十年近くぶりの再会を果たし、お互い涙を流して抱き合っていた。
……変わらないな。なんにも変わらない。
懐かしさが込み上げてくる。
木造の二階建ての家。
軒先には水色にピンクの水玉模様の大きめのパラソルが立てられていて、木製の古びた長椅子が置かれている。
夏にはよくここに座って、あいつらとアイス食べてたっけ。
古き良き時代の趣を残した松野家が、幼かった自分を思い出させるんだ。
ねえ……おそ松
あんたは今、何を思ってる――?
私を見て、あんたは何て言うかな。
「まあ!夢子ちゃん!?夢子ちゃんでしょ!!?久しぶりねえ……すっかり大人になっちゃって!」
母の後ろから控え気味に顔を覗かせ「お久しぶりです、松代さん」と挨拶した私を目にするなり、松代さんの表情がぱあっと輝いた。
「松代さんもお元気そうで良かったです。また色々とお世話になると思いますので、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。
松代さん、少し白髪が増えたな。皺も微かに深くなってる。
それだけの月日が流れていたんだ。
ここから引っ越すことになった時、最後の挨拶をロクにできなかったから僅かな気まずさもあったのだけれど、松代さんの態度からはそんなこと微塵も感じさせなかった。
大らかで活発な人柄は変わってない。
私は安堵を覚えた。そんな松代さんが好きだったから。
「ほんと、キレ……げふんげふん!――キレイになったわね、夢子ちゃん」
あれ?
一瞬松代さんが言葉に詰まったのは、気のせいだろうか。