らしくっ!
□第二話
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「俺さ〜生まれて初めて知ったんだよね〜。すんっげえ久々に会った友人を歓迎する時って〜殺虫剤まみれにした挙句にバルサンで優すぃく包んであげるんだよ〜ねえ〜みんなすぃってたあぁ?」
「おそ松兄さん、やめろって。俺達が悪かったんだから」
「はいはい。優等生ですもんねぇチョロ松くんは。規則正しく毎日毎日シコシコシコシコ……」
「だーかーらー!!やめろっつってんだろ!?女の子の前でデリカシーねえな!!それに毎日じゃねえし!」
これみよがしな嫌味を吐くおそ松に、緑のパーカーが掴みかかる。シコシコについては否定しないらしい。
おそ松がチョロ松と、呼んだ。
だから、この緑はチョロ松なんだろう。
コイツについては基本顔おそ松から特に大きく外れているとは、思わなかった。
ほんの少し黒目が小さめで、への字口。眉は下がり気味。
おそ松と言い合っているチョロ松を眺めていると、目が合ってしまった。するとほんのりと頬を赤く染め、下を向く。なぜなの。
自分自身の置かれている状況に、頭が追いついてない。
私は松野家に、いる。
気を失った後に、ここに連れてこられたんだろう。どんな感じで運ばれてきたのかは、想像したくない。
二階にあるこの部屋は嫌ってほど見覚えがあるのに、あんなにも通い詰めて自分の部屋のように寛いできたっていうのに。
今の私には言葉にできない居心地の悪さしか、なかった。
松代さんに挨拶しに行って帰ってきてみれば、私の部屋に六つ子が集合していて。そこからは発狂したからあまり覚えてないけど、ゴキブリだと思い込み殺虫剤とバルサンを駆使して退治しようとしたら謎の鬼ごっこが始まった。
そこにおまわりさんが助けに来てくれ……いや、そうじゃない。おまわりさんじゃなかった。
あれは、おそ松だったんだ。何故だか警察官の格好をしてたんだっけ。
それで、抱きしめられて――
え。抱きしめ……抱きしめられた!??
「うわあああああ!!」
そのシーンが脳裏に浮かんだ途端に押し寄せた恥らいと嫌悪感が、反射的におそ松に蹴りを入れさせていた。
「っざけんなよお前!!マジで犯っちまうぞこのアマ!!!」
先ほどから特に意味のない暴力によりボコボコの顔に、青筋を浮かべるおそ松。
そりゃ怒るのも無理もない。かも、しれないけれど。
「不法侵入したのはどこのどいつよ」
こっちにだって正当な理由がある。
「カタイこと言うなよ、昔はしょっちゅうお前んち遊びに行ってたじゃん」
「昔は昔。私達はもう、子供じゃないの!ねえ、わかるでしょ!?」
知らず知らずのうちに、声を荒げていた。