らしくっ!

□第四話
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「ニートで童貞ですけど人の道はギリギリ逸れてないっていうか、いてもいなくてもどうでもいいっていうか、道端の石ころ以下っていうか、陰気で根暗で殺人犯の目つきで口癖が『殺す』と『死ね』っていうだけで、いつかは殺るんじゃないかとは思っていて……あ、本人も言ってるんですけど燃えないゴミです。なので害はないです、後で捨てておくんで」

「……お前……殺すぞ」

「ほら!聞きました!?殺される!捕まえておまわりさん!」

「いや、お前は俺を助けたいのか陥れたいのかどうしたいんだよ」


禍々しいオーラを放出する一松に「あっはは!きらきらひからない滅びの一松星ー!!」と十四松は無邪気だった。

とにかく、だ。


「私たち仲良しなんですー!ねー!?」


この場を切り抜けるために、一松と十四松の間に立ち二人の首に腕を回して、ぐいっと胸へ引き寄せる。


ああ……なんで私がこんな事を……!!

心で泣いた。

だって仕方ないじゃない、息子が前科者になんてなったら松代さん松造さんが悲しむじゃない!
六人全員童貞ニートな時点で両親のライフはゼロよ……!!

松野家の六つ子を知らない若そうな警察官のお兄さんに、一松が覗いていたのは私の家で彼らとは幼馴染なのだということを弁解し、懸命に説得するとどうにか逮捕は免れた。

頭を下げて、去っていく警察官を見送る。
姿が見えなくなったところで、ホッと一息ついた。

ここまでの私の奮闘も虚しく、騒動の渦中の二人はといえば。


「ラッキーおっぱいだったね〜」

「ああ、もうこのまま感触を忘れないうちに死にたい……」


デヘデヘとニヤついて、鼻の下が伸びきっていた。

咄嗟に取った行動が結果、二人の顔面を胸に押しつける形になってしまったことに気づくと消えたくなった。

バカどもをまとめてハイキックでなぎ倒す。


「それであんたはここで何してたの」


立ち上がった一松に、呆れきった眼差しを向ける。


「別に。二時間ほどお前んちの窓見てただけだよ。それだけで逮捕するとかこの国おかしいんじゃないの」


おかしいのはお前の頭だ。
完全に変質者だろうが。
今からでも交番に届けに行こうか。


「一松兄さん、夢子ちゃんちの窓に何があるの?」


同じ疑問を抱いたらしい十四松が私の声を、代弁してくれた。


「それは……」


急に頬を赤く染めてもじもじと俯く一松。
恋する乙女か!

その正体を突き止めるべく、十四松と同じ方向へ視線を投げかける。

私の家の一階部分にある出窓。


「あー……なるほどね」


窓辺にちょんと座って家の中から外の景色を眺めているのは、愛猫のきなこだった。



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