夏目友人帳
□第陸話「好依の過去と的場という男」
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巴は七辻屋の紙袋を抱え、しばらく石段に座っていた。
好依はもういないのだ。
せっかく仲良くなれたのだが。
「お前、こんな所で何しておる。」
巴は顔を上げた。
「ニャンコ先生ね・・・。」
夏目が連れている用心棒の妖怪がじっとこちらを見ていた。
「久しぶりに好依と酒でも交わそうかと思ったのだが・・・どうやら、また居なくなったようだな。」
ニャンコ先生はやれやれとため息をついた。
「うん。私も、一緒にお菓子を食べようと思ったんだけど・・・。」
巴は紙袋を示す。
すると、ニャンコ先生の眼が光った。
「むむ!それは七辻屋の饅頭だな?よこせ。」
「え〜?」
巴はくすくすと笑った。
「しょうがないな。どうぞ。」
ニャンコ先生は饅頭を美味しそうに食べる。
その様子を巴はじっと見ていた。
ニャンコ先生も、ある日突然夏目君の前からいなくなっちゃうのかな。
ニャンコ先生は巴をチラッと見上げた。
「安心せい。あやつはフラっと戻ってくる。」
「ありがとう。慰めてくれるのね。」
「ふん。」
好依とはまたどこかで会えるだろう。
その時、私がおばあちゃんになってても、私の事わかってくれるかな?
巴は夏の静かな夕暮れの空を見上げ、そっと呟く。
「また会おうね。」
<第陸話・終>