夏目友人帳

第陸話「好依の過去と的場という男」
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巴は七辻屋の紙袋を抱え、しばらく石段に座っていた。
好依はもういないのだ。
せっかく仲良くなれたのだが。


「お前、こんな所で何しておる。」

巴は顔を上げた。

「ニャンコ先生ね・・・。」

夏目が連れている用心棒の妖怪がじっとこちらを見ていた。

「久しぶりに好依と酒でも交わそうかと思ったのだが・・・どうやら、また居なくなったようだな。」

ニャンコ先生はやれやれとため息をついた。

「うん。私も、一緒にお菓子を食べようと思ったんだけど・・・。」

巴は紙袋を示す。
すると、ニャンコ先生の眼が光った。

「むむ!それは七辻屋の饅頭だな?よこせ。」

「え〜?」

巴はくすくすと笑った。

「しょうがないな。どうぞ。」

ニャンコ先生は饅頭を美味しそうに食べる。
その様子を巴はじっと見ていた。
ニャンコ先生も、ある日突然夏目君の前からいなくなっちゃうのかな。
ニャンコ先生は巴をチラッと見上げた。

「安心せい。あやつはフラっと戻ってくる。」

「ありがとう。慰めてくれるのね。」

「ふん。」













好依とはまたどこかで会えるだろう。
その時、私がおばあちゃんになってても、私の事わかってくれるかな?
巴は夏の静かな夕暮れの空を見上げ、そっと呟く。

「また会おうね。」

















<第陸話・終>

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