天は二物を与える
□第1話
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『ここが桐皇…』
門の前に立ち、漆黒の髪をかき上げる少女。
程よい化粧を施し、16歳ながら何処と無く色気を纏わせている。
門を通りすぎる人たちはチラッ、チラッと少女を見ながら通り過ぎていく。
「あっ、恋空!」
そこに桃色の髪を靡かせながら走りよってくるもう一人の少女。
『さつき…』
「もうっ!あんなに一緒に行こうって言ったのに…!」
さつきと呼ばれた少女は腰に手を当て頬を膨らませる。
それを見た恋空はクスッと笑い、ごめんごめん、とさつきの頭を撫でた。
「また子ども扱いして〜〜!」
はいはいと言いながらも頭を撫で続ける目の前の人物に、さつきも諦めたようだ。
『……大輝と一緒じゃないんだね』
「え…うん……
誘ったんだけど、式なんてめんどくせぇだけだろって…」
さつきが恋空の様子を伺いながら言えば、少し安堵したようにそっかと短い返答があるだけだった。
そんな空気をどうにかしようとさつきが話題を探していると、恋空の雰囲気がいつもと違うことに気づく。
「あれ?……恋空、化粧してる…?」
綺麗〜!もう高校生だしねと騒ぐさつきに、恋空は悲しそうな笑みを浮かべた。
それを見たさつきはハッとその意味を理解し俯いた。
「ごめん……あたしっ『ばーか』
さつきが顔をあげ恋空を見れば、昔よく見た優しい笑顔で、頭をぐしゃぐしゃと撫でられ、呆然とする。
また後でねと手をヒラヒラさせながら校舎の方へ歩いていく恋空を暫く見つめたあと、入学式始まっちゃうと小走りで自分の教室へ向かうのだった。